イーグルクロー作戦

イーグルクロー作戦について

イーグルクロー作戦（Operation Eagle Claw）は、1979年11月に発生したイランのアメリカ大使館人質事件を受けて行われた人質救出作戦です。この作戦は、1980年4月24日から25日にかけて実施されました。55名以上の人質が大使館に占拠された状況で、アメリカ政府は彼らを救出するために、大規模な軍事作戦を計画しました。

背景

1979年、イランでは政府に対する反発が高まり、イスラム革命が勃発しました。ルーホッラー・ホメイニーが指導者となり、親米政権であるパフラヴィー朝が崩壊しました。この混乱の中、前国王モハンマド・レザー・パフラヴィーがアメリカに渡ったことに反発した革命軍の学生たちが、11月4日にテヘランのアメリカ大使館を占拠し、大使館員やその家族らを人質としました。

当初、アメリカ政府は小規模の救出作戦を計画しましたが、大統領ジミー・カーターはより大規模な作戦を立案し、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の4軍を総動員する「イーグルクロー作戦」を命じました。

作戦の実行

作戦当日である4月24日、アメリカ海軍の掃海ヘリと空軍の輸送機が使用され、作戦の名はライスボール作戦と呼ばれました。作戦は、オマーンのマシーラ島からデルタフォースが乗ったC-130輸送機と、ペルシャ湾の空母から発艦したRH-53Dヘリコプターが合流し、まず「デザート・ワン」に到着するというものでした。

しかし、RH-53Dは出発からトラブル続きでした。砂嵐に巻き込まれ、いくつかの機体が事故や故障により途中で帰還することになり、最終的に必要な数のヘリコプターが揃わず、作戦そのものを中止せざるを得なくなりました。運悪く、撤収作業中に発生した事故で8名が命を失う結果となり、デルタフォースはC-130機に乗り換え、残された機体はイランに放置されました。

ヘリコプターの選択による問題

イーグルクロー作戦の大きな失敗要因は、選択されたRH-53Dヘリコプターにありました。本来予定されていたHH-53H機は、海軍の反対により使用できず、砂漠地帯での運用に適さない掃海機が選ばれたのです。この選択が最終的に作戦の失敗につながりました。また、撤収が不十分であったために機密情報がイランに流出する事態も生じました。

その後の影響

イーグルクロー作戦の失敗を受けて、アメリカ政府は次の救出作戦としてクレディブル・スポーツ作戦を計画しましたが、これもまた不運に見舞われ実行には至りませんでした。その後、特殊作戦航空能力の開発が推進され、新たな特殊部隊が設立されることになりました。

この失敗はアメリカにとって大きな打撃となり、カーター政権への支持が低下し、1980年の大統領選挙ではロナルド・レーガンが勝利しました。そして、人質たちは事件発生から444日後の1981年1月20日に解放され、カーターがレーガンに政権を引き渡す日となりました。

この作戦の教訓から、アメリカは特殊部隊の強化を図り、以後の国際的な危機への対応能力を高めることになりました。

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