イーディ・セジウィック

イーディ・セジウィック：華麗なる60年代のミューズと、その悲劇的な生涯

イーディ・セジウィック（1943年4月20日 - 1971年11月16日）は、20世紀を代表するポップアートの象徴的存在であり、カリスマ的なファッションモデル、そして女優でした。カリフォルニア州の裕福な名家に生まれ育ちましたが、彼女の人生は華麗さと苦悩が複雑に絡み合う、波乱に満ちたものでした。

生い立ちと心の闇

セジウィック家はサンタバーバラの旧家で、8人の子供を持つ大家族でした。しかし、恵まれた環境とは裏腹に、幼少期から摂食障害に悩まされ、寄宿学校を中退する経験もしています。さらに、父親の浮気現場を目撃したことがきっかけで精神科病院に入院させられるなど、幼少期から心の傷を抱えていました。その後、兄の自殺という悲劇も経験し、彼女の精神状態は徐々に不安定になっていきます。こうした幼少期と青年期の経験が、彼女の人生に暗い影を落とすことになります。

アンディ・ウォーホルとの出会い、そしてファクトリー

1965年、運命的な出会いが訪れます。映画プロデューサーのパーティーで、当時ポップアート界の巨匠として注目を集めていたアンディ・ウォーホルと知り合ったのです。ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」に招かれ、彼の映画に数多く出演するようになります。「Poor Little Rich Girl」「ビニール」「Beauty #2」「チェルシー・ガールズ」など、多くの作品でセジウィックは独特の美学と存在感で観客を魅了しました。

ウォーホルとのコラボレーションは、セジウィックをポップカルチャーのアイコンへと押し上げました。彼女の斬新なファッションセンスは『ヴォーグ』や『ライフ』などの雑誌で取り上げられ、「ユース・クエイカー」と称されるほどの注目を集めます。1965年には「ガールズ・オブ・イヤー」にも選出されるなど、華々しい成功を収めました。

関係の悪化と破局

しかし、セジウィックとウォーホルの関係は永遠には続きませんでした。ロックミュージシャンのボブ・ディランとの交際が始まると、二人の間には亀裂が生じ始めます。さらに、ファクトリーに新しいスター、イングリッド・スーパースターが登場したことも、二人の関係悪化に拍車をかけました。ディランとの破局後、セジウィックはドラッグに溺れるようになり、タバコの火の消し忘れによる火傷事故なども経験するなど、生活は荒廃の一途を辿ります。

晩年と悲劇的な最期

1967年には最後の映画『チャオ！マンハッタン』に出演。その後、チェルシーホテルに住むも、薬物依存症が悪化し、入院を繰り返します。家族のもと、カリフォルニアに戻り、精神病院への出入りを繰り返す中で、マイケル・ポストと出会い結婚。ドラッグからの脱却を試みますが、1971年11月15日、サンタバーバラ美術館のファッションショーで再びドラッグに手を出してしまいます。翌朝、夫によって発見された時には、既に息絶えていました。わずか28歳という若さで、セジウィックは薬物過剰摂取によってこの世を去ったのです。

イーディ・セジウィックという存在

イーディ・セジウィックは、60年代のポップカルチャーを象徴する存在として、今日でも多くの人々に記憶されています。その華麗な人生と悲劇的な最期は、多くのアーティストや映画制作者にインスピレーションを与え続け、2006年には彼女の半生を描いた映画『ファクトリー・ガール』も公開されました。彼女の短い生涯は、時代の寵児としての輝きと、心の闇との葛藤、そして薬物依存という現代社会の影を鮮やかに浮かび上がらせています。 彼女の存在は、今もなお多くの人々の心に深い感銘を与え続けています。

参考文献

Stein, Jean; Plimpton, George (1982). Edie, An American Biography. Jonathan Cape Ltd. ISBN 978-0224020688
ジーン・スタイン、ジョージ・プリンプトン『イーディ: ’60年代のヒロイン』青山南、堤雅久、中俣真知子、古屋美登里（訳）、筑摩書房、1989年。ISBN 978-4480854681

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