イーハトーヴォ物語

イーハトーヴォ物語

『イーハトーヴォ物語』は、1993年にヘクトからリリースされたスーパーファミコン用ゲームソフトです。宮沢賢治の童話を題材にしたこの作品は、メーカーによって公称されたジャンルはRPGですが、一般的なRPGの要素はあまり見られません。

ゲームの概要

本作は、賢治が描いた理想郷「イーハトーヴォ」を旅する物語を通して進行します。プレイヤーは、話をすることで情報を集め、次の行動を決めていくシンプルなシステムを楽しむことができます。移動、会話、アイテム活用が主な要素であり、まるでアドベンチャーゲームのような感覚で進行します。難易度は比較的易しく、賢治の童話に基づいたストーリーが展開されるため、物語の進行は自然な流れで進んでいきます。

特徴として、ゲーム内では賢治の著作から取られたエピソードやキャラクターが多く登場し、全体を通して賢治の作品世界を忠実に再現しています。エンディングを迎えるごとに、その章に関連するビジュアルシーンが流れる演出もあり、プレイヤーは物語を深く堪能することができます。また、20曲以上のオーケストラサウンドも特徴の一つで、音楽面でも楽しませてくれます。

ゲームのシステム

システムは9つの章に分かれ、それぞれが賢治の文学から取られたタイトルを持っています。プレイヤーは2Dの見下ろし型マップ上で動き回り、必要な情報を収集することが求められます。アイテムを集めたり、特定のキャラクターと会話することでストーリーが進むため、知識と思考を活かして楽しむことができます。ある章をクリアすると前の章に戻れず、アイテムも回収されるため、プレイヤーは新たな行動を挟む必要があります。この構造により、繰り返しのプレイでも新たな発見ができ、飽きが来ることが少なくなっています。

物語の進行

主人公は汽車で旅をする途中、「羅須地人協会」で宮沢賢治に会うために訪れたものの、賢治は不在です。その代わり、七冊の手帳を集める任務を託されます。手帳を集めることが賢治と会うきっかけになると信じた主人公は、イーハトーヴォに留まり、その星の住人や動物たちと交流しながら手帳を探し始めます。

各章ごとに持ち込まれる物語は、賢治の代表作を織り交ぜながら進行します。たとえば、第一章「貝の火」では賢治の知識を持つ「ほらぐま先生」との対話を通じて、動物の言葉を理解する力を得ます。次の章である「カイロ団長」では、主人公はトノサマガエルの酒場を訪れ、手帳に関する情報を求めますが、団長に振り回される結果となります。

登場人物

ゲームには賢治の童話から引き継がれた多彩なキャラクターが登場します。主人公「私」は旅行者としての視点でストーリーを進め、他のキャラクターたちとの会話から動物たちの語る物語が展開していきます。ファゼーロ、市役所の職員レオーノキュースト、そしてカイロ団長など、賢治の作品に親しんでいる人にとってはお馴染みの名前が多数登場し、時には新たな視点からそれらと向き合うことができます。

評価と影響

発売当初、ゲーム誌からは賛否色々な意見が寄せられましたが、賢治の作品に触れることができるプラットフォームとして評価されています。また、本作は1997年にサテラビュー向けに再リリースされるなど、新たな世代へのアクセスも行われました。ヘクトの倒産後、長らく移植がなかったものの、2024年には新たに復刻される予定で、再びその魅力を多くの人々に伝えることとなります。賢治を知る手段としても、またゲームとしても楽しめる本作は、今後も多くのファンを魅了し続けることでしょう。

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