イーピメデイア

イーピメデイア

イーピメデイア（古代ギリシア語: Ἰφιμέδεια）あるいはイーピメデー（古代ギリシア語: Ἰφιμέδη）は、ギリシア神話に伝わる女性である。日本語では、長音を省略してイピメデイア、イピメデとも表記されることがあります。

彼女はトリオプスの娘として生まれました。伝承によれば、アローエウスと結婚し、彼との間に、後にアローアダイとして知られる双子の巨人であるオートスとエピアルテース、そして娘のパンクラティスをもうけたとされています。

アローアダイの出自に関する異説

しかし、イーピメデイアの息子であるアローアダイの出自については、異なる伝承が広く語られています。ホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』をはじめ、多く古代文献では、この双子の父親はアローエウスではなく、強力な海神ポセイドーンであるとされています。

アポロドーロスが伝える神話では、イーピメデイアは海神ポセイドーンに激しい恋心を抱いたとされています。彼女は毎日のように海辺を訪れ、海水を汲み取っては自らの身体に注ぎ続けたといいます。ポセイドーンは彼女の情熱に応えるように関係を持ち、その結果、アローアダイと呼ばれるオートスとエピアルテースが誕生したと伝えられています。

ポセイドーンを父として生まれたこれらの息子たちは、驚くべき速さで成長を遂げました。わずか9歳になる頃には、彼らの肩幅は4.2メートル、身長は実に16メートルにも達したといいます。その巨大で雄々しい姿は、有名な巨人オーリーオーンにはわずかに劣ったものの、それ以外のあらゆる人間の中で最も大きく、そして美しいものであったと語られています。アローアダイはまた、測り知れないほどの怪力の持ち主でしたが、まだ成人する前にオリュムポスの神々に戦いを挑むという無謀な行動に出てしまい、その結果、破滅を迎えることとなりました。

誘拐と悲劇（ディオドーロス伝）

シケリアのディオドーロスが記録した別の伝承は、イーピメデイアが遭遇した悲劇を伝えています。それによれば、イーピメデイアは娘のパンクラティスと共に、ナクソス島に住むトラーキア人によって誘拐されたとされています。島へ連れ去られた後、娘パンクラティスはナクソス島の王アガッサメノスの妻とされ、イーピメデイア自身は王の友人との結婚を強要されることとなりました。

一方、父アローエウスの命を受け、母と妹の行方を追っていた息子たち（アローアダイ）は、ついに彼女たちをナクソス島で発見しました。彼らはその恐るべき怪力をもってトラーキア人を武力で制圧し、降伏させることに成功しましたが、残念ながら、妹であるパンクラティスはこの騒乱の中で命を落としてしまったといいます。その後、アローアダイはナクソス島に留まり、トラーキア人を支配下に置きましたが、時が経つにつれて彼らの間に深刻な対立が生じました。最終的に彼らは互いに戦い、相討ちとなってその生涯を終えたと伝えられています。

冥府での登場

ホメーロスの長大な叙事詩『オデュッセイアー』には、主人公オデュッセウスが冥府を訪れる有名な場面があります。そこで彼は、死後の世界でペルセポネーに促されて姿を現した「名高い女たち」と出会います。この名高い女性たちの列に、イーピメデイアの名前も挙げられています。彼女以外にも、テューロー、アンティオペー、アルクメーネー、メガラー、エピカステー、クローリス、レーダー、パンドーラー、プロクリス、アリアドネー、マイラ、クリュメネー、エリピューレーといった名だたる女性たちが、この場面でその姿を見せています。

このように、イーピメデイアは、巨人の息子アローアダイの母として、そして様々な悲劇や試練に翻弄された女性として、複数の神話伝承の中でその名が語り継がれています。

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