イーヴシャムの戦い

イーヴシャムの戦い (1265年)

イーヴシャムの戦いは、1265年8月4日にイングランド中南部、ウスターシャーのイーヴシャム（現在のマーケットタウン）近郊で発生しました。この戦いは、13世紀のイングランド王国を揺るがした第二次バロン戦争における主要な戦いの一つであり、シモン・ド・モンフォール率いる男爵軍と、ヘンリー3世の息子であるエドワード王子（後のエドワード1世）率いる王軍が激突しました。

戦いの背景

ルイスの戦いでの勝利後、シモン・ド・モンフォールはイングランド政府内で支配的な地位を確立し、ヘンリー3世やエドワード王子らを捕虜としました。しかし、次第に有力な同盟者を失い、王太子エドワードの脱走も重なり、モンフォールの影響力は低下していきます。グロスター伯ギルベール・ド・クレアが王側についたことは、モンフォールにとって大きな痛手でした。

モンフォールは、ウェールズの王子であるサウェリン・アプ・グリフィズに支援を要請し、引き換えに自身の爵位の全面的な承認と軍事的利益の維持を約束しました。しかし、この同盟は国内でのモンフォールの人気を低下させる要因となりました。一方、エドワード王子はグロスターを包囲して陥落させ、モンフォール軍との合流を阻止するため、モンフォールの息子シモン6世・ド・モンフォール軍を攻撃し、大きな損害を与えました。その後エドワードは南下し、8月4日にイーヴシャムでモンフォール軍を捕捉しました。

エドワード王子は、ケニルワースで捕獲した旗を利用してモンフォールを欺き、エイヴォン川の湾曲部に閉じ込めました。援軍が来ないと悟ったモンフォールは、「奴らは何と巧みに進軍していることか。我々の身体は奴らのものでも、我々の魂は神のものだ」と嘆いたと伝えられています。

戦闘の経過

王党派軍は、ルイスの戦いの教訓を生かし、イーヴシャム北部のグリーンヒルと呼ばれる高台に陣を構えました。エドワード王子が左翼、グロスター伯ギルベール・ド・クレアが右翼をそれぞれ指揮しました。8時頃、激しい雷雨の中、モンフォール軍はイーヴシャムの町を出発しました。

ルイスの戦いでは、バロン軍は白い十字の軍服を着用していましたが、今回は王党派軍が赤い十字を旗印としました。年代記作家ウィリアム・リシャンガーによると、モンフォールは王党派軍の整然とした進軍を見て、「奴らは自分で（あの行進を）学んだのではなく、私から教わったのだ」と叫んだとされています。

兵力はバロン軍が約5,000、王党軍が約10,000と推定されています。モンフォールは、兵力で劣る状況を打破するため、敵戦線の中央に兵力を集中させ、楔を打ち込む戦術を採用しました。当初、モンフォールの戦術は成功を収めましたが、サウェリン・アプ・グリフィズが派遣したウェールズ歩兵が早期に離脱したため、バロン軍はたちまち劣勢に立たされました。王党軍はモンフォール軍を包囲し、戦いは一方的な虐殺と化しました。

ルイスでの敗北の記憶が新しい王党派は、強い復讐心をもって戦い、バロン軍兵士の降伏を許しませんでした。モンフォールの息子ヘンリー・ド・モンフォールが最初に殺され、その後モンフォール自身も馬を失い、戦死しました。モンフォールの遺体は、頭、手、足、睾丸を切り落とされ、バラバラにされました。捕虜となっていたヘンリー3世自身は、モンフォールに拘束されていた際に変装しており、ロジャー・ド・レイボーンによって救出されました。

戦いの影響

イーヴシャムの戦いでの勝利により、王権は事実上回復しました。しかし、モンフォールの残党による抵抗は続き、1266年10月25日にケニルワース宣言が調印されるまで、散発的な抵抗（ケニルワース包囲戦など）が続きました。ケニルワース宣言では、反乱に参加した者は、反逆への関与の度合いに応じて土地を買い戻すことができると定められました。当初、ケニルワース城の守備隊はこの提案を拒否しましたが、最終的には受け入れ、1267年に合意に至りました。

イーヴシャムの戦いとその後の反乱は、ヘンリー3世の治世における男爵家の対立に終止符を打ち、イングランド王国は統一と進歩の時代を迎えました。

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