イ号一型乙無線誘導弾

イ号一型乙無線誘導弾

概要

イ号一型乙無線誘導弾は、大日本帝国陸軍によって開発された空対艦ミサイルである。誘導弾の研究は1930年代から行われ、日本でも小規模に進められたが、第二次世界大戦が進む中でその重要性が増した。特に1944年5月には戦局の悪化が進む中で、より積極的な開発が求められるようになった。

歴史的背景

1944年5月、陸軍飛行第5戦隊の高田勝重少佐の特攻による悲劇が、陸軍内の技術者の怠慢を問題視する契機となった。この結果、親子飛行機構想の提案に繋がり、イ号の計画が具体化していった。

陸軍を中心に開発が進み、最初に800kgと300kgの二種類の爆弾を搭載する誘導弾が実用化されることが決定された。これらはそれぞれイ号一型甲無線誘導弾、イ号一型乙無線誘導弾として知られることになる。開発は三菱と川崎の2社によって進められたが、基本的には陸軍の指示に基づいて行われた。

1944年9月、陸海の技術を統合するための陸海技術運用委員会が設置され、イ号の研究も対象に含まれた。試作一号機は1944年10月に完成し、その後30機の製造が行われた。投下試験は茨城県水戸市郊外と神奈川県真鶴で行われ、特に「飛行豚」と呼ばれる可愛らしい愛称が技術者たちに親しまれた。

事故と呼称

1945年2月、伊東上空で発射されたイ号一型乙は、無線機の故障から針路を変え、熱海の旅館に墜落する事件が発生した。この事故は報道規制がかけられるほどの騒動となり、エロチックなイメージが語り継がれ「エロ爆弾」との悪口が海軍内で流行した。

その後、運用部隊は八日市飛行場に移り、琵琶湖上の無人島を目標に研究を続けた。実用化に向けた評価も得られたが、しかし1945年6月には空襲の影響で工場が破壊され、開発は終了することとなった。

構造と性能

イ号一型乙は、高翼形式と木製主翼を特徴とし、胴体は金属製の骨組みにトタンが張られて製造された。誘導方式としては手動指令照準線一致誘導方式を採用しており、動力には特呂一号二型液体ロケットエンジンが使用された。このエンジンは、過酸化水素水と過マンガン酸ソーダを触媒として使用し、150kgの推力を80秒間発生させる能力を持っていた。

運用方法

無線誘導方式の空対艦ミサイルとして運用される予定であり、九九式双発軽爆撃機やキ102双発襲撃機に搭載される想定であった。母機は目標から10kmの地点に進出し、高度700mから1000mで投下が行われた。投下後、誘導弾はエンジンに点火し、ロケット推進で飛行を開始する。さらに、目標への接近に際して母機が敵機に狙われるリスクも考慮された。

イ号一型乙の開発は戦局において月日が経つにつれて急速に進行し、最終的に完成度は高まったものの、戦局の悪化によってその活躍を見ることは叶わなかった。

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