ウィスコンシン・セントラル鉄道

ウィスコンシン・セントラル鉄道：アメリカ中西部を駆け抜けた鉄道史

ウィスコンシン・セントラル鉄道（Wisconsin Central Railway, WC）は、アメリカ合衆国でかつて盛んに活躍した鉄道会社です。現在はカナディアン・ナショナル鉄道（CN）の子会社となっていますが、独立企業として存在した時代は、数々の歴史的出来事と経営変遷を経てきました。本稿では、CN傘下となる以前のWCの歴史に焦点を当てて解説します。

設立と初期の成長

WCの起源は、1871年にウィスコンシン州議会によって設立されたウィスコンシン・セントラル・レールロードに遡ります。設立の目的は、ウィスコンシン州と周辺州を鉄道で結ぶことであり、州政府からの土地提供という恵まれた環境のもと、線路建設が進められました。ウィスコンシン州では唯一、政府から土地の無償提供を受けた鉄道として知られています。

WCの路線網は着実に拡大し、1877年にはアシュランド、1884年にはセントポール、1886年にはシカゴ、そして1908年にはスペリオルへと到達しました。これらの都市を結ぶことで、ウィスコンシン州における経済発展に大きく貢献しました。

ノーザン・パシフィック鉄道とのリース契約と経営危機

1889年から1893年にかけて、WCはノーザン・パシフィック鉄道（NP）にリースされました。NPは、セントポールとミネアポリスからシカゴへの路線網を拡大する際に、新たな線路建設ではなく既存のWC路線をリースするという戦略を取ったのです。しかし、高額なリース料と1893年の恐慌により、NPは経営破綻。リース契約は終了し、WCは再び独立経営に戻ることとなりました。NPによる買収も検討されましたが、実現には至りませんでした。

ミネアポリス・セント・ポール・アンド・スー・セント・マリー鉄道との関係と吸収合併

1908年には、ミネアポリス・セント・ポール・アンド・スー・セント・マリー鉄道（旧SOO、カナダ太平洋鉄道の子会社）にリースされ、その傘下で運営されることとなります。1897年には社名をウィスコンシン・セントラル・レールウェイに変更しています。その後、1932年には管財下に置かれ、1944年には倒産。1954年にウィスコンシン・セントラル・レールロードとして再編されましたが、1961年にはついにスー・ライン鉄道（SOO）に吸収合併され、独立企業としての歴史に幕を閉じました。

シカゴ・グランド・セントラル駅

NPによる経営期間中、WCはシカゴ南部にターミナル駅としてシカゴ・グランド・セントラル駅を建設しました。ロマネスク様式を基調としたこの駅舎は、建築家ソロン・スペンサー・ビーマンによって設計され、その壮麗な姿は人々の記憶に強く刻まれました。しかし、NPによるリース終了後、シカゴ・グランド・セントラル駅を含むシカゴの資産はボルチモア・アンド・オハイオ鉄道（B&O）に譲渡されました。

まとめ

ウィスコンシン・セントラル鉄道は、アメリカ中西部の発展に貢献した重要な鉄道会社でした。設立から吸収合併に至るまでの歴史は、経営の盛衰や時代の変化を反映したものであり、現代の鉄道経営にも多くの示唆を与えてくれます。政府からの土地提供という特異な設立経緯や、他社とのリース契約、経営危機といった出来事を経て、その歴史は現代においても研究・考察に値すると言えるでしょう。 この鉄道の軌跡は、アメリカ鉄道史における重要な一章として、今後も語り継がれていくことでしょう。

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