ノーザン・パシフィック鉄道

ノーザン・パシフィック鉄道：アメリカ大陸を横断した鉄道の興亡

ノーザン・パシフィック鉄道（NP）は、アメリカ合衆国北西部を縦断した歴史的な大陸横断鉄道です。アイダホ州、ミネソタ州、モンタナ州、ノースダコタ州、オレゴン州、ワシントン州、ウィスコンシン州、さらにはカナダのマニトバ州やブリティッシュコロンビア州の一部にも路線を展開し、アメリカ北部の発展に大きく貢献しました。1970年にバーリントン・ノーザン鉄道、1996年にはBNSF鉄道と合併し、その歴史に幕を閉じました。本稿では、NPの設立から合併に至るまでの歴史、経営、そしてその影響について、詳細に見ていきます。

設立と初期の苦難

1864年、NPはアメリカ北部を横断する大陸横断鉄道として建設許可を取得しました。莫大な未開拓地が鉄道用地として提供されるという、野心的な計画でした。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。初期の6年間は資金調達に苦しみ、工事の開始は1870年までずれ込みました。南北戦争の支援者でもあったジェイ・クックの資金援助により、ようやく事業は本格化しました。

西への進出と困難

NPはミネソタ州から西へと路線を拡大し、ダコタ準州（現在のノースダコタ州）に到達しました。ワシントン準州（現在のワシントン州）カラマ付近からピュージェット湾への路線建設も開始されました。建設機械は喜望峰経由でカラマまで運ばれ、ミネソタ州各地で使用されました。1871年にはミネソタ州とノースダコタ州の境界であるムーアヘッドまで路線が延伸し、東部側の建設は完了しました。しかし、ネイティブ・アメリカンとの衝突や、1873年の恐慌による資金不足など、多くの困難に直面しました。1875年には一度目の倒産を経験しますが、フレデリック・ビリングスらの尽力により再建を果たしました。

ビラード時代の躍進と黄金のスパイク

1879年、フレデリック・ビリングスが社長に就任。企業再編や債権売却を進め、ミズーリ川の西側に路線を伸ばしました。その後、ヘンリー・ビラードが社長に就任すると、NPは急速な成長を遂げました。ビラードは、ヨーロッパの投資家からの資金調達に成功し、路線網の拡大を加速させました。1883年には、ゴールド・クリークで「ゴールデン・スパイク」が打ち込まれ、大陸横断鉄道の完成が祝われました。この祝典には、著名な人物も多く招かれていました。しかし、この急成長はビラードを消耗させ、ウォール街の動向により、完成後すぐに株式が暴落しました。ビラードは社長を辞任し、NPの経営は再び鉄道のプロフェッショナルであるロバート・ハリスに託されました。

ピュージェット湾への直通ルートと競争

NPは、コロンビア川沿いの遠回りルートではなく、カスケード山脈を越えてピュージェット湾に直結するルートの建設を検討しました。1888年、スタンピード峠にトンネルが開通。ピュージェット湾への直通ルートが完成しました。この成功にもかかわらず、NPは依然として厳しい経営状況にありました。1887年から1893年までビラードは取締役として復帰しましたが、1893年恐慌により、NPは二度目の倒産を迎えました。

モルガンの介入と再建

NPの経営は、金融界の大物であるジョン・ピアポント・モルガンが引き継ぎました。モルガンはNPの再建にあたり、チャールズ・ヘンリー・コスターやチャールズ・サンガー・メレンといった人物を要職に起用しました。モルガンによる再建は成功し、NPは安定を取り戻しました。しかし、グレート・ノーザン鉄道（GN）との競争は激化し、NPは勢力拡大のため、採算を度外視した路線建設を行うこともありました。

CB＆Q買収合戦とノーザン・パシフィック・コーナー

シカゴへの路線延伸を目指したNPは、シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道（CB&Q）の買収合戦に巻き込まれます。ユニオン・パシフィック鉄道（UP）との激しい争奪戦となり、1901年には「ノーザン・パシフィック・コーナー」と呼ばれる株価暴落事件を引き起こしました。この事件は、金融市場に大きな衝撃を与えました。最終的には、NP、GN、CB&Qの持株会社であるノーザン・セキュリティーズ・カンパニーが設立されましたが、1904年には反トラスト法に抵触するとして解体されました。

20世紀以降と合併

20世紀に入ると、NPはGNとの協力関係を維持しながら、営業区域の拡大、設備の近代化を進めました。1970年には、NP、CB&Q、GN、スポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道（SP&S）が合併し、バーリントン・ノーザン鉄道（BN）が誕生しました。そして1996年、BNはアッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道と合併し、BNSF鉄道となりました。

まとめ

ノーザン・パシフィック鉄道は、アメリカ北西部開発において重要な役割を果たした大陸横断鉄道でした。その歴史は、資金調達、路線建設、経営再建、他社との競争など、多くのドラマに彩られています。幾多の困難を乗り越え、発展を遂げたNPは、その歴史をBNSF鉄道として現在に受け継いでいます。

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