ヘンリィ五世

映画『ヘンリィ五世』の概要

1944年に公開された映画『ヘンリィ五世』は、ウィリアム・シェイクスピアの名作戯曲を基にした作品です。この映画は、百年戦争の中盤におけるイングランド王ヘンリー5世の勇気ある戦いを描いています。特に、ローレンス・オリヴィエが監督と主演を務めたことで知られ、彼が手掛けた「シェイクスピア3部作」の第一作目として位置付けられています。

制作背景と歴史的な文脈

映画が制作された1944年、世界は第二次世界大戦の真っ只中にありました。そのため、この映画はイギリスの国威を発揚する目的で作られ、イギリス政府からも支援を受けています。公開は1948年であり、その後世界中で高評価を受けました。特に日本において、第22回キネマ旬報ベスト・テンで第1位に輝き、オリヴィエは賞とともに多くの称賛を受けました。

映画の色彩設計は当時の日本の映画人に多くの影響を与え、そのドラマチックな色使いは、観る者に強い印象を残しました。

内容と演出

映画は、ロンドンにあるグローブ座を俯瞰するショットで始まります。このパノラマの中で、劇が上演される様子や観客の表情が映し出され、物語はフランスでの戦争の場面に移行します。このように、1415年の戦争の情景に切り替わることで、観客は時代背景をより深く理解することができます。物語の結末では再びグローブ座に戻り、劇の終演とともに映画も終わるという、巧妙な構成がこの作品の特徴です。

キャストと音楽

主要なキャストには、ヘンリィ五世役のローレンス・オリヴィエをはじめ、レスリー・バンクス（コーラス役）、フェリックス・エイルマー（カンタベリー大司教）などが名を連ねています。また、映画音楽はウィリアム・ウォルトンが担当し、ミュア・マシーソンの指揮のもとロンドン交響楽団が演奏しました。ウォルトンは、古いフランス民謡や『フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック』などの素材を用いた楽曲を創作しており、その音楽も映画の魅力のひとつとなっています。

また、ウォルトンの曲は、後に演奏会用の組曲としても編纂され、多くの音楽ファンにも受け入れられています。映画から派生した弦楽のための小品や、オーケストラ向けの組曲など、さまざまな形で再創作されています。

結論

『ヘンリィ五世』はただの映画作品であるだけでなく、日本や世界における映画制作や演技、音楽に多大な影響を与えた作品の一つです。その独特な演出や色彩設計、さらにはシェイクスピアの文学を映像に凝縮した力強い物語は、今なお多くの人々に愛され続けています。

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