ウィリアム・バンス

ウィリアム・ケネス・バンス：GHQ宗教文化資源課長、神道指令策定への貢献

ウィリアム・ケネス・バンス（William Kenneth Bunce、1907年8月31日 - 2008年7月23日）は、アメリカ海軍の軍人であり、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ/SCAP）の民間情報教育局宗教文化資源課長として、日本の宗教政策に大きな影響を与えました。特に、GHQによる神道指令の策定において中心的な役割を果たし、国家神道の解体という歴史的転換を導いたことで知られています。

生涯と経歴

バンスはオハイオ州ガリポリスで生まれ、Otterbein Collegeを卒業後、オハイオ州立大学で歴史学の修士号を取得しました。1930年代には、松山高等学校で英語教師として来日し、日本文化に触れる中で深い知識と理解を培いました。1939年にはオハイオ州立大学で歴史学博士号を取得し、1940年にOtterbein Collegeの歴史学科長、後に学部長に就任。しかし、1943年に辞職し、アメリカ海軍予備役軍に入隊しました。

軍隊では、コロンビア大学の海軍軍政学校で国際法、軍政、経済学、東南アジアの政治・文化・経済を学び、1944年にはプリンストン大学の海軍軍政学校で地域研究部門職員として日本の占領計画策定に関わりました。戦後、東京に派遣され、GHQの民間情報教育局宗教資源課長として、占領下の日本の宗教行政を担いました。また、GHQと日本の代表としてユネスコ会議にも参加し、1949年にはユネスコ専門家委員会東京支部長に就任するなど、国際的な舞台でも活躍しました。

占領終結後も在日アメリカ大使館などで外交官として19年間勤務し、1971年に引退。引退後はヴァージニア州、メリーランド州に住み、園芸と写真を趣味として過ごしました。

人物像

バンスは日本語に堪能であり、日本の文化や社会に対する深い理解を持っていました。彼の知識と経験は、GHQにおける宗教政策の立案に大きく貢献しました。その功績が認められ、1946年にはレジオン・オブ・メリットを受勲しています。

バンスの宗教文化資源課長時代の文書は、「W. Kenneth Bunce Papers」としてトルーマン大統領図書館に保管されており、日本の占領政策や宗教行政に関する貴重な資料として研究されています。

家族

大学時代に知り合ったAlice Shivelyと結婚し、2人の娘と2人の息子をもうけました。妻は宣教師の娘で、日本で生まれ育ったという背景を持っています。

神道指令への関与

バンスが宗教文化資源課長として深く関与した神道指令（正式名称：国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、助成、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件）は、国家神道と神社神道を分離し、政教分離を確立することを目的としたものです。この指令により、国家神道は国家の保護や支援を受けなくなり、宗教法人としての地位を失いました。バンスの役割は、この指令の策定において重要なものであり、日本の宗教史における転換点となりました。

ウィリアム・ケネス・バンスは、アメリカ海軍の軍人、GHQの官僚、そして日本文化への理解者として、複雑な立場の中で日本の戦後改革に深く関わった人物です。彼の足跡は、日本の現代史を理解する上で重要な意味を持っています。

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