ウィリアム・ロイド・ガリソン

ウィリアム・ロイド・ガリソン：自由への闘士

ウィリアム・ロイド・ガリソン (1805-1879) は、アメリカの奴隷制度廃止運動において最も重要な人物の一人です。ジャーナリストであり社会改革者でもあった彼は、徹底した奴隷制度廃止を主張し、その信念を貫き通した生涯を送りました。彼の活動は、アメリカ社会に大きな衝撃を与え、奴隷制度廃止へと繋がる重要な役割を果たしました。

奴隷制度廃止運動への参加と初期活動

25歳の時、ガリソンは奴隷制度廃止運動に参加しました。当初は、解放された黒人をアフリカの植民地に移民させることを目的としたアメリカ植民地協会に関わっていました。しかし、この協会の活動が奴隷制度そのものの維持を目的としていると認識したガリソンは、間もなく協会から離脱します。

その後、彼はクエーカーのベンジャミン・ランディが発行する新聞「普遍的解放の天才」で執筆を始め、後に共同編集者となります。この新聞を通して、ガリソンは次第に奴隷制度の即時かつ完全な廃止という、より急進的な立場へと傾倒していきます。

ランディとの共同編集時代には、奴隷制度の残酷さを告発する「ザ・ブラック・リスト」という連載記事を発表。この記事で、ガリソンは奴隷貿易に関わった人物を名指しで批判し、名誉毀損で訴えられます。裁判の結果、罰金刑を言い渡されたガリソンは投獄されましたが、反奴隷制度運動家の支援を受け釈放されました。この事件は、ガリソンをより一層熱心な活動家へと突き動かしました。

『リベレーター』と30年にわたる闘い

1831年、ガリソンは自身による反奴隷制度新聞『リベレーター』を創刊します。この新聞は、限られた部数からのスタートでしたが、徐々に購読者を増やし、30年以上にわたって奴隷制度廃止運動をリードしました。ガリソンは『リベレーター』を通して、奴隷制度の非道さを告発し、その廃止を強く訴え続けました。南北戦争の終結と奴隷制度廃止を告げる憲法修正第13条の成立を目の当たりにしたガリソンは、1865年に『リベレーター』の最終号を発行し、その活動を幕を閉じました。

組織活動と激しい議論

ガリソンは、ニューイングランド反奴隷制度協会の設立やアメリカ反奴隷制度協会の共同設立など、組織活動にも積極的に携わりました。彼は、協会がどの政党とも提携すべきではないこと、そして女性も協会の活動に平等に参加すべきだと主張しました。しかし、この主張は協会内部に大きな亀裂を生じさせました。女性の積極的な参加を認めない新たな団体が設立されたり、既存の反奴隷制度団体が分裂するなどの事態を招きます。

ガリソンは、非暴力と消極的抵抗を重視した運動を展開しました。しかし、彼の過激な主張は、常に激しい批判や反対にさらされていました。ボルティモアでの投獄だけでなく、ジョージア州政府から高額な賞金首として追われるなど、身の危険に晒されることもしばしばありました。

特に1835年、イギリスの反奴隷制度活動家ジョージ・トンプソンに代わって講演会を行った際、暴徒に襲われ、リンチの危険に晒されました。この事件は、ガリソンと彼の活動に対する社会の敵対的な感情を象徴的に示す出来事でした。

奴隷制度廃止後と晩年

奴隷制度廃止後も、ガリソンは禁酒運動や婦人参政権運動など、様々な社会改革運動に尽力しました。アメリカ反奴隷制度協会の会長職を辞任し、『リベレーター』の発行を停止した後も、講演や執筆を通じて社会改革への貢献を続けます。晩年には、かつて対立していたフレデリック・ダグラスなどとの和解も果たしました。

1879年、ニューヨーク州で亡くなったガリソンは、生涯を通じて不屈の精神で奴隷制度廃止のために闘い続けました。彼の活動は、アメリカの民主主義と人権の歴史に大きな足跡を残しています。彼の言葉、行動、そして揺るぎない信念は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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