ウィリアム・J・A・ベイリー

ウィリアム・ジョン・アロイシウス・ベイリー：ラジウム入り薬品を販売した実業家

ウィリアム・ジョン・アロイシウス・ベイリー（William John Aloysius Bailey、1884年5月25日 - 1949年5月17日）は、アメリカ合衆国で特許薬の発明家、実業家として活動しました。彼はハーバード大学を中退後、自らを医学博士であると偽り、放射性物質であるラジウムが様々な病気の治療に効果があると宣伝しました。

ラジウム入り薬品の販売

ベイリーは、ニュージャージー州イーストオレンジにベイリー・ラジウム・ラボラトリーズ社（Bailey Radium Laboratories Inc.,）を設立し、ラジウム入り薬品の販売を開始しました。彼は、連邦取引委員会から継続的に調査を受けていましたが、発明・販売した製品によって富を築き、裕福な生活を送りました。

ベイリーが販売した製品の中には、「アリウム（Arium）」と名付けられた媚薬がありました。これは、「お互いの魅力が弱まった既婚者の生活に、新たな幸福と若々しいスリルをもたらす」と宣伝されていました。

1918年には、飲料物にラジウムを加えることで、精神疾患や頭痛から糖尿病、貧血、便秘、喘息まで、数十もの症状を治療できると主張しました。1922年、ベイリーはラジウム錠剤「アリウム」をラジウム・ケミスツ社（Radium Chemists Inc.）を通じて販売し、一定の成功を収めました。同社は他に、リナリウム（Linarium）、デンタリウム（Dentarium）、カパリウム（Kaparium）なども販売していました。

ラディトールによる悲劇

ベイリーは、ラディトール（Radithor）の販売によって、さらに富を増やしました。ラディトールは、放射線を用いた偽医療の中でも悪名高い特許薬でした。ベイリーは、ラジウム塩を水に溶かし、ラジウム226及びラジウム228それぞれから1マイクロキュリー（1μCi）の放射能を放出するように製造し、その治癒特性は内分泌系を刺激するためだと主張しました。ラディトールは、「生ける屍のための治療薬（A Cure for the Living Dead）」や「永久の快活（Perpetual Sunshine）」として宣伝されました。

しかし、ラディトールは実際には人体に有害な物質であり、1932年には、エベン・バイヤーズが約1,400本ものラディトールを服用した結果、放射線によって誘発された癌で死亡しました。

ラディエンドクリネーターの発明

ベイリーは1930年ごろに、ラディエンドクリネーター（Radiendocrinator）という製品も発明しました。これは、皮膚に装着することを目的とした、ケース入りの放射線源でした。

第二次世界大戦とその後

第二次世界大戦中、ベイリーはIBM（International Business Machines Corporation）の電子機器部門で戦時管理者として勤務しました。

1949年5月17日、ベイリーは膀胱癌で亡くなりました。約20年後に彼の遺体が掘り起こされた際、遺体は「放射線によりボロボロとなっていた」と伝えられています。

ラジウム入り薬品の危険性

ベイリーの事例は、科学的根拠に基づかない医療行為や、放射性物質の不適切な利用が、人々に深刻な健康被害をもたらすことを示しています。彼の行為は、現代においても倫理的な問題として議論されるべきであり、消費者は科学的な検証がなされていない製品に注意を払う必要があります。

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