ウィリアム・R・トルバート

ウィリアム・リチャード・トルバート・ジュニア（William Richard Tolbert Jr., 1913年5月13日 - 1980年4月12日）は、リベリアの政治家であり、第20代大統領を務めました。

生い立ちと経歴

1913年、トルバートはモンセラード郡ベンソンビルで、アメリコ・ライベリアンの家庭に生まれました。彼の祖父は、アメリカのノースカロライナ州チャールストンからリベリアへ移住した解放奴隷であり、1879年に家族と共にリベリアに入植しました。トルバートはリベリア大学を卒業後、ヴィクトリアと結婚。バプテスト教会の牧師としても活動し、ウィリアム・タブマン政権下で副大統領を務めました。

大統領就任と政策

1971年、タブマン大統領がロンドンの病院で死去すると、トルバートが後継として大統領に就任しました。1975年には、国内で唯一合法政党であったホイッグ党の公認を受け、無投票で再選。1976年1月から8年の任期を開始しました。トルバートは、ソビエト連邦や中華人民共和国といった東側諸国との国交を樹立し、国際的な関係を多様化させました。

クーデターと最期

しかし、1980年4月12日、トルバート政権は、サミュエル・ドウ軍曹率いる軍事クーデターによって終焉を迎えます。アメリコ・ライベリアンによる支配に不満を抱いていた先住民部族出身の兵士たちが起こしたクーデターにより、トルバートは殺害されました。彼は寝室でドウの兵士たちによって殺害され、その遺体は冒涜されました。また、トルバートの兄であるフランク・トルバート上院仮議長や、リチャード・アブロム・ヘンリーズ下院議長、セシル・デニス外務大臣など、政権幹部13名も処刑されました。

このクーデターにより、1878年から100年以上続いたホイッグ党とアメリコ・ライベリアンによるリベリア支配は終わりを告げました。トルバート政権の閣僚の中で国外脱出に成功したのはわずか4名であり、そのうちの一人、エレン・ジョンソン・サーリーフは後にリベリアの大統領に就任しました。トルバートの家族は軟禁から解放された後、アメリカへ亡命しました。

親族関係と影響

トルバートは、コートジボワール大統領のフェリックス・ウフェ＝ボワニや、ブルキナファソ大統領のブレーズ・コンパオレと親戚関係にありました。ウフェ＝ボワニの養女の娘の夫がトルバートの義理の息子であり、コンパオレは義理の息子が亡くなった後、その未亡人と再婚しました。このため、ウフェ＝ボワニとコンパオレは、トルバートを殺害したサミュエル・ドウに対し個人的な恨みを抱き、チャールズ・テーラーによる反政府活動を支援しました。その後、ドウはテーラーと決別したプリンス・ジョンソンによって殺害されました。

トルバートの死は、リベリアの政治に大きな影響を与え、その後の内戦と混乱の時代へと繋がっていきました。

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