フェリックス・ウフェ＝ボワニ

フェリックス・ウフェ＝ボワニ：コートジボワールの父、光と影

フェリックス・ウフェ＝ボワニ（1905年10月18日 - 1993年12月7日）は、コートジボワールの初代首相、そして大統領として、国の独立と発展に大きく貢献した人物です。独立運動の指導者として、また、経済政策の手腕によって、コートジボワールを「イボワールの奇跡」と呼ばれるほどの経済成長を遂げさせました。しかし、彼の死後、コートジボワールは内戦へと突き進むことになり、その功績には光と影が付きまといます。

生涯：独立への道、そして権力の掌握

コートジボワール中央部のンゴクロ出身のウフェ＝ボワニは、第二次世界大戦後、フランス憲法制定議会の議員に選出されます。1946年にはコートジボワール民主党を設立し党首に就任。同年にはアフリカ民主連合を結党して総裁となり、独立運動を主導しました。

親仏的な立場を取り、フランス本国との関係を重視する一方で、各植民地の分離独立を主張し、パン・アフリカ主義を唱えるモディボ・ケイタと対立。この対立に勝利し、1959年5月1日に独立コートジボワールの主席ないし首相となり、1960年8月には初代首相、同年11月からは初代大統領に就任しました。

独立後のコートジボワール：奇跡と矛盾

独立後、ウフェ＝ボワニは一党独裁体制を確立し、反共主義的な政策を推進。西側諸国との関係を深めました。経済面では、カカオの生産・流通を管理し、輸出価格の安定化を図るとともに、カカオ農園の開拓を奨励。近隣諸国からの移民を受け入れ、生産拡大に乗り出しました。

これらの政策が功を奏し、1980年代までコートジボワール経済は年率8%という高い成長率を達成。「イボワールの奇跡」と称えられました。

しかし、カカオに依存したモノカルチャー経済は、1980年代以降のカカオの生産過剰によって経済基盤が崩れ、社会不安が増大する要因となりました。

また、ウフェ＝ボワニは自身の故郷に新首都ヤムスクロを建設しましたが、首都機能は旧首都アビジャンに残されたままで、その浪費的な政策は国力を疲弊させる一因となりました。

1990年、複数政党制による初の大統領選が行われ、ウフェ＝ボワニは7選を果たしますが、1993年に任期中に死去しました。

死後のコートジボワール：内戦への道

ウフェ＝ボワニの死後、彼の政策の矛盾が表面化します。ブルキナファソ人移民とコートジボワール人との対立、経済の停滞に加え、後継者にはウフェ＝ボワニほどのカリスマ性がなく、コートジボワールの秩序は崩壊。内戦へと突き進むことになりました。

栄誉：フェリックス・ウフェ＝ボワニ平和賞

1989年、ユネスコは平和に貢献した個人・団体を称える「フェリックス・ウフェ＝ボワニ平和賞」を設立しました。これは、ウフェ＝ボワニの平和への貢献を記念するものです。

フェリックス・ウフェ＝ボワニは、コートジボワールの独立と発展に貢献した偉大な指導者であると同時に、その後の内戦という悲劇の種を蒔いた人物でもありました。彼の功績と遺産は、今日のコートジボワールに深く刻まれています。

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