ウィル・ゲニア

パプアニューギニア出身の偉大なラグビーユニオン選手、ウィル・ゲニア（Will Genia）は、1988年 1月17日に同国の首都ポートモレスビーに生を受けました。主にスクラムハーフとしてプレーし、その卓越したスキルとリーダーシップで、オーストラリアラグビー界、そして世界の舞台で長年にわたり活躍しました。身長174cm、体重85kgという体格ながら、ゲームを巧みにコントロールする司令塔として不動の地位を築き上げました。

ゲニア氏は、ラグビーに深く根差した家庭に育ちました。父キルロイ・ゲニア氏はパプアニューギニアの国会議員として大臣を務めた人物であり、社会的に高い地位にありました。また、兄弟たちもラグビー選手として活躍しており、兄のフランシス氏はパプアニューギニア代表としてプレーし、弟のナイジェル氏もクイーンズランド州の高校代表やオーストラリア20歳以下代表に選ばれるなど、文字通りラグビー一家の出身です。

学生時代、ゲニア氏はオーストラリアの教育機関に進学し、ブリスベン・ボーイズ・カレッジで学びました。カレッジのラグビークラブでは、後にオーストラリア代表でチームメイトとなるジェームズ・ホーウィル氏と共にプレーしました。この頃からその才能は広く認められ、クイーンズランド州のセカンダリースクール選抜チームや、さらにレベルの高い高校代表（SchoolBoys）にも選出されるなど、若くして将来を嘱望される存在でした。

プロキャリアは、2007年にスーパーラグビー（当時の名称はスーパー14）のレッズに入団したことから始まりました。当時、チームにはサム・コーディングリー氏やベン・ルーカス氏といった優れたスクラムハーフがおり、熾烈なポジション争いに直面しましたが、ゲニア氏は持ち前の粘り強さと才能で徐々に頭角を現し、レギュラーの座を確固たるものにしました。彼の正確で素早いパス、そして試合の流れを読む卓越したゲームメイク能力は、すぐにチームにとって不可欠な存在となります。

2010年には、まだ若手ながらチームのキャプテンという重責を任され、そのリーダーシップでチームを牽引しました。この年の活躍は目覚ましく、シーズン終了後にはチームメイト間の投票によるPlayer of the yearと、ファン投票によるPeople's Choice awardの両方を受賞し、チーム内外からの高い評価を得ました。そして、キャリアのハイライトの一つとも言えるのが、2011年シーズンです。ゲニア氏は中心選手としてレッズを牽引し、チーム創設以来初となるスーパーラグビー優勝という歴史的快挙に大きく貢献しました。この功績が認められ、オーストラリア国内のラグビー記者投票によるAustralian Super Rugby Player of the Yearも受賞しました。

国際舞台でも、ゲニア氏は輝かしい足跡を残しました。2009年にオーストラリア代表「ワラビーズ」に初めて選出されると、同年のトライネーションズでオールブラックス戦で待望の代表デビューを果たしました。その年の欧州遠征におけるイングランド代表戦では、マン・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せるなど、代表チームにおいてもすぐに重要な役割を担うようになります。ワラビーズの司令塔として、スクラムハーフのポジションからチームの攻撃をオーガナイズし、正確なキックやパス、そして時には自ら突破を図るプレーで、オーストラリア代表の勝利に貢献しました。長年にわたり、多くのテストマッチでワラビーズの背番号9を背負い続け、世界の強豪国を相手にその実力を証明しました。

晩年には、新たな挑戦の場として日本のラグビーを選択しました。2019年、トップチャレンジリーグに所属していた近鉄ライナーズ（現在の花園近鉄ライナーズ）への加入が発表されました。この移籍は、かつてレッズやワラビーズでゲニア氏と共に強力なハーフ団を形成したSOクウェイド・クーパー氏との「黄金コンビ」復活として、日本のラグビーファンの間で大きな話題となりました。同年11月17日に行われた清水建設ブルーシャークスとのトップチャレンジリーグ開幕戦に途中出場し、日本での公式戦デビューを果たしました。彼の加入は、チームに豊富な経験と高いプロ意識をもたらし、日本のラグビー界にもその存在感を示しました。

そして、2025年5月、所属していた花園近鉄ライナーズからの退団が報じられ、長きにわたるプロラグビー選手としてのキャリアに終止符が打たれました。ウィル・ゲニア氏は、パプアニューギニアにルーツを持ちながらオーストラリア代表として世界の頂点を目指し、スーパーラグビー優勝、ワラビーズでの活躍、そして日本でのプレーと、多岐にわたるキャリアを通じてラグビー界に多大な貢献を果たした名選手として、その功績は語り継がれるでしょう。

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