ウィル・ペニー

映画『ウィル・ペニー』解説

『ウィル・ペニー』（原題: Will Penny）は、1968年に公開されたアメリカ映画です。トム・グライスが監督を務め、チャールトン・ヘストンが主演を務めた西部劇で、後に二人はさらに二つの作品でタッグを組んでいます。

史劇などの大作で雄々しい役柄を演じる印象の強いチャールトン・ヘストンが、本作では一転して、寂寥感を漂わせる等身大の初老カウボーイを見事に演じきりました。

概要

公開時、「第二の『シェーン』」という宣伝文句が用いられましたが、期待されたほどの興行的成功は収めませんでした。しかし、ガンファイトを主眼とするのではなく、荒涼とした冬の風景を背景に、カウボーイたちが必死に生きる姿を叙情的に描いた作品として、映画史に名を残す隠れた名作と評価されています。ヘストン自身も、この作品を特にお気に入りの一つとして挙げています。

本作の原案は、サム・ペキンパーが製作したTVシリーズ『The Westerner』の一エピソード「Line Camp」です。1960年代後半の当時、単純な勧善懲悪の西部劇はすでに時代遅れになりつつあり、映画界は大きな転換期を迎えようとしていました。

ストーリー

腕利きの初老カウボーイ、ウィル・ペニー（チャールトン・ヘストン）は、テキサスからカンザスシティへと伸びる鉄道支線まで牛を追い込みました。雇い主のアンス・ハワード（G・D・スプラドリン）はその腕を見込み、さらなる同行を依頼しますが、ウィルは仕事を若い世代に譲り、ブルー（リー・メジャース）とダッチー（アンソニー・ザーブ）と共にテキサスへ帰ることに。

旅の途中、彼らは野生の鹿の狩猟を巡って、ならず者のクィント（ドナルド・プレザンス）一家と争いになり、クィント一家の一人を撃ち殺してしまいます。連れのダッチーも重傷を負い、医者を探すためにさらに南下する途中、ケートロン交易所で、オハイオからオレゴンへ向かうアレン親子（ジョーン・ハケット、ジョン・フランシス）と出会います。

ウィル達はアルフレッドの町に到着し、ダッチーを医者に診せました。ウィルは二人と別れ、紹介されたフラットアイアン牧場へ向かいます。幸運にも雇ってもらうことができ、冬の間、広大な牧場の境界付近を見回る仕事に就くことになりました。

見回りの拠点となる山小屋に到着すると、そこにはオレゴンへの道案内に置き去りにされたアレン親子がいました。ウィルは職務として親子に立ち退くように命じ、牧場の見回りに出かけますが、恨みを抱いたクィント一家に襲われてしまいます。ウィルは大怪我を負わされ、身ぐるみ剥がされた上で冬山に置き去りにされますが、必死で山小屋までたどり着き、アレン親子の看病を受け、なんとか一命を取り留めます。

命の恩人であるアレン親子を山小屋から追い出すことができなくなったウィルは、迫り来る冬に備え、彼らと共に冬越えの準備に追われます。三人は交流を深め、ウィルは生まれて初めて家庭の温かさを知ります。自分の感情に戸惑いながらも幸せな日々を過ごしますが、クリスマスの間近な夜、再びクィント一家が山小屋に乱入してきます。

ウィルたちは奴隷のように扱われ、キャサリンはクィントの息子たちとの結婚を強要されます。ウィルとキャサリンは計画を練り、隙を見てウィルは逃げ出すことに成功。彼を探しに来たブルーとダッチに遭遇したウィルは山小屋へ引き返し、二人の助けを得てクィント一家を撃退します。

異変に気付いたアレックス（ベン・ジョンソン）たちも牧場の母屋から駆けつけ、騒ぎは収まります。しかし、それはウィルとアレン親子の別れの時でもありました。キャサリンから愛を告白されても、ウィルにはそれを受け止める自信も時間も残されていませんでした。

ウィルは牧場を辞め、アレックスにアレン親子を託し、ブルーとダッチと共に南へと帰って行くのでした。

キャスト

ウィル・ペニー: チャールトン・ヘストン
キャサリン・アレン: ジョーン・ハケット
クィント: ドナルド・プレザンス
Preacher: リー・メジャース
アレックス: ベン・ジョンソン

スタッフ

監督・脚本：トム・グライス
製作：フレッド・エンゲル、ウォルター・セルツァー
音楽：デイヴィッド・ラクシン
撮影：ルシアン・バラード
編集：ウォーレン・ロウ

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