ウィーン歴史地区

ウィーン歴史地区：音楽と建築が織りなす世界遺産

ウィーン歴史地区は、オーストリアの首都ウィーンに位置する、ユネスコの世界遺産です。古代ローマ帝国の宿営地ウィンドボナを起源とし、中世にはドナウ川沿いの交易地として発展しました。

歴史

本格的な発展期は、1155年にバーベンベルク家がクロスターノイブルクからウィーンに都を移したことに始まります。1221年には都市特権を獲得し、その後ハプスブルク家の支配下に入りました。14世紀には、建設公ルドルフ4世のもとでシュテファン大聖堂やウィーン大学が建設され、大きく発展しました。ハプスブルク家が神聖ローマ帝国の帝位を独占すると、帝都ウィーンでは華やかな貴族文化が栄えました。

1683年の第二次ウィーン包囲を撃退後、17世紀末からは旧市街のホーフブルク宮殿に加え、郊外にシェーンブルン宮殿が造営され、これが「音楽の都ウィーン」の礎となりました。18世紀末にはヨーゼフ2世によりウィーン総合病院が開設され、プラーター公園が一般市民に開放されるなど、都市環境が改善されました。

19世紀半ばに産業革命を迎えると、農村からの人口流入により人口が急増。1869年の63万人から1910年には203万人に達し、ロンドン、パリ、ベルリンと並ぶ大都市となりました。1873年には万国博覧会も開催され、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世による大規模な都市改造が行われました。市壁を撤去し、環状道路（リンク）を設け、路面電車を導入、歴史主義的建造物やモニュメントが街路に配置され、現在のウィーン旧市街の外観が形成されました。

近代以降は、モーツァルト、ベートーヴェンなど数多くの作曲家が活躍し、「音楽の都」として世界的に知られています。

主な建造物

ホーフブルク宮殿: ハプスブルク家の宮殿として、王宮として使用。現在は大統領官邸。
シュテファン大聖堂: 14世紀建造のゴシック様式の大聖堂。
ウィーン大学: ドイツ語圏最古の大学。
ウィーン国立歌劇場: 世界的に有名なオペラハウス。
ベルヴェデーレ宮殿: バロック様式の宮殿。美しい眺望が魅力。
国会議事堂: ギリシャ建築様式を取り入れた壮麗な建物。
ウィーン市庁舎: ネオゴシック様式の美しい建物。
カールス教会: バロック様式の教会。
ブルク劇場: ドイツ語圏で最高の格式を誇る劇場。
自然史博物館、美術史美術館: 貴重なコレクションを所蔵。
カールスプラッツ駅舎、郵便貯金局: オットー・ワーグナー設計の建築。

登録基準

ウィーン歴史地区は、以下の登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(2): 建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展における人類の価値の重要な交流を示す。
(4): 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6): 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接または明白に関連する。

危機遺産

近年、ウィーン歴史地区は、新たなコンサートホールの建設を巡る都市開発計画が、景観を損ねる恐れがあるとして、2017年にユネスコの危機遺産リストに登録されました。歴史地区と現代都市の融合を目指した「ウィーン覚書」に反し、高層建築物が計画されたことが原因です。今後の動向が注目されています。

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