プラーター公園

オーストリアの首都ウィーンに位置する「プラーター公園」は、市民にとっての重要な緑地空間であり、有名な遊園地エリアを含む広大な施設です。「ウィーンの森」と並び称される憩いの場である一方で、特にその一角にある遊園地は多くの観光客を引きつける人気スポットとなっています。

公園の概要と構造

ウィーン市街地の中心部から東隣に位置する第2区に広がるプラーターは、約600ヘクタールもの面積を誇ります。これはウィーンの中心にある公園としては最大であり、第2区の大部分を占めるほどの広大さです。「プラーター」という名称は、ラテン語で「草原」を意味する「pratum」に由来するという説が最も有力とされています。公園一帯は、かつてドナウ川の下流域に特徴的だった湿地帯の様相、すなわち草原や森林の中に小川が流れ、池が点在する風景を今に留めています。

公園の中央を貫くように延びる「ハウプトアレー」（メインアベニュー）は、北西から南東方向へ約4.5キロメートルに及ぶまっすぐな道です。この道路は車両の通行が制限されているため、ジョギングやサイクリングを楽しむ人々にとって格好の場所となっています。また、毎年春に開催されるウィーンマラソンのコースの一部としても利用されています。

ハウプトアレーとほぼ平行して、北側には軌間381mmのミニ鉄道「リリプットバーン」が走っています。約3.9キロメートルの道のりを20分ほどかけてゆっくりと進むこの列車は、公園内の移動手段としてだけでなく、アトラクションとしても人気です。

公園へのアクセスも整備が進み、2008年にウィーンで開催されたUEFA欧州選手権に合わせて地下鉄U2線がプラーター沿いに延伸され、いくつかの新しい駅が開設されました。

ヴルステルプラーター：ウィーンの遊園地

プラーター公園の北西に位置する「ヴルステルプラーター」（Der Wurstelprater）は、一般的に単に「プラーター」と呼ばれることも多い、ウィーンを代表する遊園地です。ここには、映画『第三の男』への登場で知られる「ウィーン大観覧車（ヴィーナー・リーゼンラート）」をはじめ、約250種類もの多彩なアトラクションが集結しています。メリーゴーラウンドやローラーコースター、ゴーカートといった定番から、迷路やプラネタリウム、そして高さ117メートルからウィーンの街並みを一望できる回転ブランコ「スターフライヤー」まで、あらゆる年代の来場者が楽しめる設備が揃っています。

遊園地の営業期間は例年3月から10月末までで、営業時間は午前10時から翌午前1時までと比較的遅くまで開いています。ただし、この期間外でも遊園地の敷地自体への入場は可能です。ヴルステルプラーターへの入場料は無料ですが、各アトラクションを利用するにはそれぞれチケットを購入する必要があります。アトラクションごとの料金は1ユーロから10ユーロ程度と幅があります。

園内には、食事を楽しめるレストランや屋台も数多くあります。特に有名なのが「シュヴァイツァーハウス」で、名物のシュヴァインシュテルツェ（豚すね肉のロースト）やブドヴァイゼル・ブドヴァルビールを目当てに多くの人が訪れます。これらの飲食店は、遊園地の営業期間外も利用できる場合があります。

プラーターの歴史

プラーターの土地は古くから知られており、最も古い記録は1162年まで遡ります。当時はドナウ川沿いの水郷地帯であり、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世からある貴族に与えられたという記録があります。1403年には既に「Pratter」という地名が使われていましたが、当初はドナウ川の中の小さな島を指していました。その後、この名前で呼ばれる範囲が周辺地域へと広がっていきました。

土地の所有者は時代とともに変遷しましたが、1560年にハプスブルク家のマクシミリアン2世が購入し、皇室の狩り場と定めました。次の皇帝ルドルフ2世は密猟を防ぐために一般人の立ち入りを禁止しましたが、1766年にヨーゼフ2世がこれを市民に開放しました。これにより、公園内にカフェや商店の営業が許可され、後の遊園地発展の基盤が築かれました。なお、プラーターでの狩りはその後も続けられ、1920年まで行われていました。作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトも、1785年頃にウィーン訛りの歌詞が付いたカノン『プラーターへ行こう』を作曲しており、当時の市民にとってプラーターが身近な行楽地であったことがうかがえます。

1873年には、プラーターを会場としてウィーン万国博覧会が開催され、これによりプラーターは本格的な行楽地としての地位を確立しました。1895年には公園の北側の一角に、ヴェネツィアの街並みを模したテーマパーク「ウィーンのヴェネツィア」が開園しました。水路を巡らせたこのテーマパークは、世界初のテーマパークの一つとも言われ、オペレッタ上演などでウィーン市民の間で大きな話題となりました。このテーマパーク自体はわずか6年間で閉鎖されましたが、1897年にその一部として建設された大観覧車は、ヴルステルプラーターに引き継がれ、現在もウィーンのシンボルとして親しまれています。

20世紀に入り、新たな娯楽として映画が登場すると、プラーターには短いフィルムを見せる見世物小屋が次々と現れました。1910年頃にはより長いサイレント映画が上映されるようになり、小屋は劇場風の建物へと変化していきました。1920年代のサイレント映画全盛期には、1700人を超える観客を収容する大規模な映画館も存在し、プラーターは映画館街としても賑わいました。しかし、第二次世界大戦末期の1945年の空襲により壊滅的な被害を受け、映画館街は衰退。最後に残った一軒も1984年に閉鎖され、プラーターから映画館は姿を消しました。

その後も、1928年のリリプットバーン開業、現在のエルンスト・ハッペル・シュタディオンを含むプラーター競技場や競馬場の建設、都市高速道路の開通など、プラーターの開発は続けられました。かつての万国博覧会の跡地には、現在、大規模な見本市会場が建てられています。

公園内には「プラーター博物館」があり、プラーターの長い歴史と変遷を知ることができる展示を見学できます。ウィーンを訪れた際には、広大な緑地での散策、歴史的な大観覧車に乗る体験、活気ある遊園地での遊びなど、様々な角度からプラーターの魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか。

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合、地下鉄U1線または路面電車のPraterstern駅、あるいはSバーンのWien Nord駅がプラーター公園の最寄り駅となります。バス路線も利用可能です。

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