ウイークエンド (1967年の映画)

『ウイークエンド』：混沌とした週末の果てに

1967年、ジャン＝リュック・ゴダール監督が放った問題作『ウイークエンド』。フランスとイタリアの合作映画として制作され、日本公開時には「ウイークエンド」と表記されたこの作品は、現代社会への痛烈な風刺と、暴力的な描写が融合した、ゴダール作品の中でも異彩を放つ一作として知られています。

倦怠感と異常事態の連鎖

物語の中心となるのは、パリで中流家庭を営むロランとコリーヌのデュラン夫妻。倦怠感に包まれた二人は、週末の休息を求め、車で郊外へとドライブに出かけます。しかし、そこは想像を絶する混沌の世界でした。

週末旅行へ向かう道すがら、彼らは異常な渋滞に巻き込まれます。渋滞は単なる交通障害にとどまらず、集団ヒステリーへと発展。事故、死体、奇妙なコスプレ集団、銃撃戦と、次々と異常事態が連鎖し、夫婦の週末旅行は悪夢へと変貌していきます。愛車さえ失ってしまう事態に直面しても、コリーヌはエルメスのバッグを失ったことへの嘆きを優先するなど、現代社会の価値観への皮肉が随所に込められています。

ゲリラと暴力、そして人肉

徒歩で田舎の実家を目指す旅路は、想像を絶する過酷なものとなりました。たどり着いた実家では、母親殺害、遺産相続という衝撃的な出来事が待ち構えています。さらに、パリへの帰路では、架空のビートニク・ゲリラ組織「セーヌ＝エ＝オワーズ解放戦線 (FLSO)」に襲撃され、ロランは命を落とします。そして、コリーヌはFLSOの若者たちとともに、夫ロランの人肉を食らうという、衝撃的な結末を迎えることになります。

ゴダール作品を彩る豪華な顔ぶれ

本作には、ジャン・ヤンヌ、ミレーユ・ダルクといった当時の著名な俳優陣に加え、ミシェル・クールノ、ジャン・ユスターシュ、ポール・ジェゴフ、ダニエル・ポムルールなど、批評家、映画監督、脚本家、現代美術家といった多様な分野の著名人が出演しています。FLSOメンバーの一人であるイザベル役を演じたイザベル・ポンスは、ゴダールの他の作品にも携わり、現在も映画プロデューサーとして活躍している人物です。

批評と評価、そして歴史的背景

『ウイークエンド』は、1968年、五月革命のさなかに第18回ベルリン国際映画祭で金熊賞にノミネートされました。また、雑誌『プレミア』が選ぶ「もっとも危険な25本の映画」にも選出されており、その衝撃的な内容と社会への鋭い批判性が評価されています。2006年にはポンピドゥー・センターでのゴダール展で上映され、ゴーモンによるニュープリントで公開されたことで、現代においても高い関心を集めています。日本ではATG、フランス映画社により公開、リバイバル上映され、その異様な世界観は、日本の観客にも強い印象を残しました。

作品概要

監督・脚本: ジャン＝リュック・ゴダール
撮影監督: ラウール・クタール
音楽: アントワーヌ・デュアメル、ギイ・ベアール、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
出演: ジャン・ヤンヌ、ミレーユ・ダルク、ジャン＝ピエール・カルフォン、他多数
製作年: 1967年
製作国: フランス、イタリア

『ウイークエンド』は、単なるエンターテインメント作品ではなく、社会への痛烈な批判と、人間の深層心理をえぐり出す問題作として、今もなお多くの映画ファンを魅了し続けています。その暴力的な描写と衝撃的な結末は、観る者に深い余韻を残すことでしょう。

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