ウエダアツシ

1977年、奈良県に生まれたウエダ アツシ（本名：上田 篤司）は、日本の映像作家、映画監督、そして脚本家である。近畿大学で映画制作を学び、卒業後は編集者としての経験を経て、映像の世界へと本格的に進んだ。現在は東京都を拠点に活動している。

大学在学中に映画部に所属し、自主映画制作に励んだことが、彼の映像クリエイターへの道を拓く重要な契機となった。卒業後、ウエダはすぐには映像業界に入らず、雑誌やWEBの編集者として活動。この異分野での経験は、物語の構成や情報伝達といった面で、後に手掛ける映像作品の構成や表現に独自の視点をもたらすことになる。

映像作家としてキャリアを積み重ねる中で、彼は長編映画の監督へと進出する。その初の長編監督作となったのが、2014年公開の『リュウグウノツカイ』である。この作品は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2014」のオフシアター・コンペティション部門において北海道知事賞を受賞。この受賞が、映画監督としてのウエダ アツシの名前を世に知らしめ、その後のキャリアを本格的に開く決定的な評価となった。

『リュウグウノツカイ』以降も、ウエダ監督は意欲的に多様な作品を発表している。2016年公開の『桜ノ雨』は、ボカロ楽曲を原作とする話題作として第28回東京国際映画祭パノラマ部門で上映され注目を集めた。また、2017年公開の『天使のいる図書館』は、その教育的、文化的な側面が評価され、文部科学省選定作品となるなど、社会的な意義を持つ作品も手がける。『TANIZAKI TRIBUTE 「富美子の足」』（2018年）、オムニバス映画『ジャンクション29』の一編『ツチノコの夜』（2019年）、人気漫画を実写化した『うみべの女の子』（2021年）、そして配信限定のWEB映画『ミライヘキミト。』（2024年）など、様々な題材やジャンルに挑戦し、監督としての幅広さを示している。

映画監督・脚本家としての才能は、企画力にも及んでいる。2017年には、カルチュア・エンタテインメントとTSUTAYAが主催する映画企画コンペ「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2017」にて、自身の企画『モータープール（仮）』が準グランプリ（Filmarks賞）を受賞。これにより、単に脚本や原作を映像化するだけでなく、ゼロからオリジナルの物語を生み出す能力も高く評価されている。

ウエダ アツシの活動は、劇場公開される長編映画の監督に限定されない点が特筆される。彼はテレビドラマ（NHK Eテレ『青山ワンセグ開発』、BS松竹『カメラ、はじめてもいいですか?』の一部エピソード）、短編映画の監督・編集も手がける。さらに、数多くの著名な映画やドラマにおいて、メイキングディレクターとして制作過程の貴重な記録映像を構築・編集。テレビドラマのPRディレクターとしては、作品の魅力を視聴者に伝えるプロモーション映像を制作するなど、映像の「裏側」や「伝え方」にも深く関与している。加えて、公開作品の劇場予告編や、アーティストのミュージックビデオの演出も多数手がけている。他にも、映画のラインプロデューサーや他の監督作品の編集協力、イベント企画・運営など、映像制作の川上から川下まで、非常に多様な分野で経験を積んできた。

これらの多岐にわたる経験は、ウエダ アツシが映像というメディアを多角的に捉え、異なる役割を通じて作品に貢献できる稀有なクリエイターであることを物語る。監督として物語を紡ぐ一方で、記録者、宣伝担当者、編集者といった多様な視点を持つことが、彼の生み出す映像に独自の視点や表現の幅をもたらしていると言えるだろう。ジャンルやフォーマットを問わず、常に最適な映像表現を追求する姿勢が、彼のキャリアの根幹にある。

趣味として釣りやフットサルを楽しむ一面も持つウエダ監督。映画監督として、また映像業界の多方面で活躍を続ける彼の幅広い経験と確かな手腕は、今後の作品においても発揮されるに違いない。日本の映像表現の多様性を示す一例として、ウエダ アツシの活動から今後も目が離せない。

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