ウォッチメン (テレビドラマ)

HBOドラマ『ウォッチメン』：原作コミックの魂を受け継ぐ新たな物語

アラン・ムーアとデイヴ・ギボンズによる伝説的コミック『ウォッチメン』を原作とした、デイモン・リンデロフ企画・製作総指揮のHBOテレビシリーズ。原作のテーマを現代に置き換え、人種間の緊張を軸に展開する、新たな『ウォッチメン』の世界が描かれます。

舞台設定：原作から34年後のアメリカ

物語は、コミック版から34年後の2019年、オクラホマ州タルサを舞台に展開します。原作では1985年にオジマンディアスが仕組んだ偽装テロにより、米ソ間の核戦争の危機は回避されましたが、ヒーローたちはその存在を非合法化されています。しかし、社会には新たな緊張が生まれていました。ロバート・レッドフォードが大統領を務めるリベラルなアメリカでは、人種差別問題が深刻化。タルサでは、白人至上主義団体「第7機兵隊」が、ロールシャッハのマスクを被り、人種差別被害者を守る警察と対立します。

2016年の「ホワイト・ナイト事件」で、多くの警官が殺害されました。生き残ったアンジェラ・エイバー刑事とジャッド・クロフォード署長は、覆面姿で自警団として機兵隊と戦います。それは、かつてヒーローたちが活動していた姿と重なるものでした。

ストーリーの核心

物語はアンジェラが、友人であり上司であったジャッド・クロフォードの殺人事件を捜査するところから始まります。捜査を進める中で、彼女は自警団活動を巡る謎に直面していきます。物語には、原作コミックのキャラクターであるドクター・マンハッタン、シルク・スペクター、オジマンディアスも登場し、過去と現在が交錯しながら、物語は展開していきます。

主要登場人物

アンジェラ・エイバー / シスター・ナイト (演: レジーナ・キング)
黒ずくめのマスクを被った警官。ホワイト・ナイト事件の生存者で、正義を追求する強い意志を持つ。
ジャッド・クロフォード (演: ドン・ジョンソン)
タルサ警察署の署長。アンジェラの同僚であり、上司。
ウェイド・ティルマン / ルッキングラス (演: ティム・ブレイク・ネルソン)
アンジェラの同僚で、取り調べを担当。
カルヴィン・“カル”・エイバー (演: ヤーヤ・アブドゥル＝マティーン2世)
アンジェラの夫。
エイドリアン・ヴェイト / オジマンディアス (演: ジェレミー・アイアンズ)
かつてのヒーローで、知略に長けた人物。
ローリー・ブレイク / シルク・スペクター (演: ジーン・スマート)
かつてのヒーローで、現在はFBI捜査官。

製作の背景

企画段階ではザック・スナイダーも関わっていましたが、最終的にデイモン・リンデロフが製作総指揮を務めることになりました。リンデロフはコミック版の「リミックス」を目指し、リブートではなく、原作の世界観を拡張する新たな物語を創造することを目指しました。彼は現代社会における人種間の緊張をテーマに、綿密な調査と多様な脚本家チームによって、物語を構築しました。

特に、1921年のタルサ人種虐殺を物語に組み込んだのは、リンデロフの強い思い入れによるものです。彼はこの歴史的事件を多くの人に知ってもらいたいと考え、それをシリーズの中心的な要素として据えました。また、劇中劇『アメリカ英雄物語』は、過去のヒーローであるフーデッド・ジャスティスの物語を描き、複雑な歴史を多角的に捉えようとしています。

音楽は、トレント・レズナーとアッティカス・ロスが担当し、独特の世界観を音楽で彩りました。彼らは、パイロット版の撮影前にすでに楽曲を用意しており、その音楽は、物語の雰囲気をさらに引き立てています。

評価と視聴率

批評家からは、その大胆なテーマと重厚なストーリーテリングが高く評価されました。Rotten Tomatoesでは96%の支持率を獲得し、Metacriticでは85/100という高スコアを記録しました。一方で、原作コミックの解釈を巡っては、意見が分かれる部分もありました。特にロールシャッハの扱いについては、原作の意図と異なるという指摘もありました。

まとめ

『ウォッチメン』は、単なるスーパーヒーローものに留まらず、社会問題に深く切り込んだ意欲作です。原作コミックの精神を受け継ぎながら、現代社会への鋭い視点を提示するこの作品は、多くの視聴者に衝撃と感動を与えました。

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