ウォルター・デヴェレル

ウォルター・ハウエル・デヴェレル (1827-1854) は、アメリカ合衆国ヴァージニア州生まれの19世紀イギリス画家です。若くして夭折したにもかかわらず、ラファエル前派運動において重要な役割を果たした人物として知られています。

デヴェレルは2歳の時に家族と共にアメリカからイギリスに移住しました。その後、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ美術学校で研鑽を積み、そこで後にラファエル前派の中心人物となるダンテ・ゲイブリエル・ロセッティと出会います。ロセッティとの出会いは、デヴェレルの芸術家としての道を大きく変えることになります。

1851年からはロセッティと共同でアトリエを構え、制作活動を行いました。ロセッティの影響を強く受けながらも、デヴェレルは独自の芸術性を追求しました。彼の作品には、ラファエル前派特有の細密な描写や象徴的な表現に加え、同時代の風俗画家チャールズ・ロバート・レスリーの影響も見て取ることができます。これは、当時の美術界における多様な潮流を吸収し、独自の表現へと昇華させたデヴェレルの才能を示しています。

デヴェレルは、ラファエル前派の多くの画家たちがモデルとして起用したエリザベス・シダルを、最初にモデルとして描いた画家としても知られています。後にロセッティと結婚するシダルをモデルに描いた作品は、デヴェレルの初期の代表作として高く評価されています。このことから、デヴェレルがラファエル前派の画家たちとの緊密な関係を築き、その発展に貢献したことがわかります。

しかし、デヴェレルは27歳の若さでこの世を去りました。そのため、彼の作品数は多くありません。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツにはわずか4点の作品しか残されていません。彼の短い生涯は、多くの未完成の作品や実現しなかった構想を残したまま幕を閉じました。もし彼が長生きしていたら、彼の芸術はさらに大きく花開いたことでしょう。

彼の作品の中でも特に有名なものに「A Pet」があります。この作品は、デヴェレルがロンドン郊外のキュー（現在ロンドンの一部）にある自宅で制作されたものです。この作品は、彼の私生活の一端を垣間見ることができ、彼の内面世界を反映していると考えられています。デヴェレルの作品は、限られた数ではありますが、初期ラファエル前派の様式と風俗画的な要素が融合した、独特の魅力を持つ作品群として現代でも高い評価を受けています。彼の短い生涯と、その才能の片鱗を示す数少ない作品は、美術史における貴重な存在としてこれからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

もう一度検索