ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの生涯と作品

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ（1828年5月12日 - 1882年4月10日）は、イギリスの画家であり詩人として知られています。彼はラファエル前派の一員であり、詩人クリスティーナ・ロセッティの兄でもあります。ロセッティの家族も文学に関わりがあり、特に彼の叔父には最初の吸血鬼小説の著者として知られるジョン・ポリドリがいます。

ロセッティはロンドンのシャーロット・ストリートでイタリア系移民の子として誕生しました。父のガブリエーレは詩人であり、イタリア語の教授として活動していました。ロセッティは元々文学に惹かれ、5歳の頃にはすでに戯曲を書いたりしていましたが、絵画に対する情熱も育まれていきました。彼は、ノリッジ派のジョン・セル・コットマンに学んだ後、1841年に大英博物館近くの私立絵画学校に進学しました。

1846年にはロンドンのロイヤル・アカデミー付属美術学校に入学し、1848年にウィリアム・ホルマン・ハントやジョン・エヴァレット・ミレーと共に「ラファエル前派」を結成しました。この運動は、当時のアカデミーの古典偏重教育に挑戦するもので、自然をそのまま表現することを理念としていました。特に、ジョン・ラスキンの思想が大きな影響を与え、彼の美術観は自然の美を尊重するものでした。とは言え、ラファエル前派は長続きせず、数年のうちに解散してしまいます。

ロセッティの作品は、聖書や文学、伝説に題材を求めている点が特徴であり、彼自身のスタイルが形成されました。しかし、彼の作品は他のラファエル前派の画家に比べて精巧な描写が乏しく、より装飾的で耽美的な傾向が強いと言えます。特に、彼の私生活には2人の女性、エリザベス・シダルとジェーン・バーデンが大きな影響を与えました。

エリザベス・シダルとは長い婚約の末に結婚し、彼女はロセッティの作品のモデルとしても知られています。彼女の死はロセッティの創作活動に深く影響を与えており、『ベアタ・ベアトリクス』などの代表作が彼女に捧げられました。一方、ジェーン・バーデンとはロセッティが制作中に出会い、彼女もまた多くの作品でモデルとして登場します。ロセッティとジェーンの関係は特に複雑であり、彼女はロセッティが理想とした女性の象徴でもありました。

ロセッティは晩年、酒や薬物に溺れる生活を送り、不眠や精神的な苦悩に悩まされました。彼は1882年に亡くなるまで、創作を続けましたが、心の内に抱えた葛藤や個人的な悲劇が彼の作品に色濃く反映されています。彼の代表作には『受胎告知』や『プロセルピナ』があり、これらの作品は彼の独自の視点と技術を示しています。

ロセッティの影響は彼の死後も続き、後の美術運動や芸術家たちに多大な支持を受けました。彼の生涯や作品は、今なお多くの人々に感動を与え、アートにおける重要な位置を占めています。

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