ウォルター・ミティ

ウォルター・ミティ：夢想と現実の狭間で

ウォルター・ミティは、ジェームズ・サーバーの短編小説『ウォルター・ミティの秘密の生活』に登場する主人公であり、そのキャラクターは複数の映画作品にも影響を与えています。1947年の映画『虹を掴む男』ではダニー・ケイが、2013年の『LIFE!』ではベン・スティラーがそれぞれミティを演じました。

キャラクターと物語

ミティは、温厚で内向的な性格の持ち主で、日常生活の中で些細な出来事をきっかけに、壮大な空想の世界へと入り込む癖があります。原作の短編小説では、ミティは第二次世界大戦中の勇敢な飛行艇パイロット、有能な外科医、冷酷な殺人鬼など、様々な人物に姿を変えます。白昼夢の中で彼は、英雄的な活躍を見せますが、現実世界ではいつも中途半端に終わります。彼の空想は、しばしば他者の無神経な言動によって中断され、現実に引き戻されます。物語の結末は、ミティが空想の中で銃殺隊に立ち向かう場面で終わります。この物語にはユーモラスな要素も含まれていますが、その根底には、ミティの悲劇的な側面を示唆する、より深く暗いメッセージが込められています。

大衆文化における影響

ウォルター・ミティという名前は、「無能な夢想家」という一般的な意味で使われるようになり、多くの辞書にもその定義が掲載されています。例えば、『アメリカンヘリテージ英語辞典』では、ウォルター・ミティを「個人的な勝利の幻想的な白昼夢にふける、普通の、しばしば無能な人」と定義しています。サーバー作品に登場する多くの頼りない男性主人公の中でも、彼は最も有名なキャラクターであり、「夢見がちで無様なサーバー男の典型」とされています。

ワーナー・ブラザースの社長であったジャック・L・ワーナーは、自伝の中で、俳優のエロール・フリンを「世界のウォルター・ミティたちにとって、壮大でセクシーで動物的な魅力を持つヒーロー」と評しています。

また、ヘンリー・キッシンジャーの伝記では、第四次中東戦争中にニクソン大統領の側近が、ニクソンの「ウォルター・ミティ的な傾向」を抑制しようとしたことが記されています。さらに、宇宙飛行士のジョン・グレンは、自伝の中で、一般の人が「ウォルター・ミティ的な夢想」を抱くことについて言及し、宇宙という未知の領域では、そのような想像力を働かせることさえ困難であると述べています。

近年では、イギリス国民党の訓練マニュアルで、一部のメンバーを「嘘つき、変わり者、ウォルター・ミティータイプ」と表現したり、PTSDを抱える退役軍人の中に戦闘体験を捏造する「ウォルター・ミティ」のような人物がいることが報じられたりしています。映画監督のテリー・ギリアムは、自身の作品『未来世紀ブラジル』を「ウォルター・ミティとフランツ・カフカの出会い」と表現しています。

イギリス軍におけるスラング

イギリス軍では、軍歴詐称者のことを「ウォルター・ミティ」を短縮して「ウォルト」と呼ぶスラングがあります。イギリスでは、軍人になりすます行為は法律で禁止されており、軍歴詐称を行った人物の例として、アラン・マキルレイスという人物が挙げられます。また、元SAS隊員のアンディ・マクナブは、著書の中で、SAS入隊希望者の中で虚栄心から入隊を希望した者は「ウォルター・ミティ」というレッテルを貼られ、去らされたと述べています。

映画化作品

1947年に公開された映画『虹を掴む男』では、ダニー・ケイがウォルター・ミティを演じましたが、原作者のサーバーはこの映画化に反対しました。2013年には、ベン・スティラーが監督・主演を務めた『LIFE!』が公開され、新たな解釈でウォルター・ミティの物語が描かれました。

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