ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館

ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館：鳥類学研究の聖地と貴重なコレクション

イングランドのハートフォードシャー州トリングにあるウォルター・ロスチャイルド動物学博物館は、ロンドン自然史博物館の分館であり、鳥類学研究において世界的に重要な役割を担う施設です。同博物館の鳥類学部門の本拠地として、世界中から研究者が訪れる活気ある研究拠点となっています。

ロスチャイルド男爵の情熱と膨大なコレクション

この博物館の起源は、2代ロスチャイルド男爵ライオネル・ウォルター・ロスチャイルドの並外れた博物学への情熱に遡ります。幼少期から博物学に魅せられた彼は、7歳の時に将来博物館を設立すると宣言し、10歳で既に自身のコレクションを収蔵する小屋を構えていました。

21歳の誕生日には、父である初代ロスチャイルド男爵ナサニエルから、トリング・パーク内の一部土地を贈与されました。彼はその地に昆虫標本と書籍を収蔵する建物、そして管理人の住居を建設。その後、剥製標本を展示する建物を増築し、1892年8月に一般公開されました。

当初から、そのコレクションは圧倒的な規模を誇っていました。鳥類や哺乳類の剥製標本4000点以上、そしてなんと4万点以上の鳥類仮剥製標本と50万点以上の昆虫標本が存在したのです。この膨大なコレクションを整理・管理するために、エルンスト・ハータートとカール・ヨルダンという2人のキュレーターが任命されました。

コレクションの増加に伴い、1908年から1912年にかけて博物館の増築が行われ、研究と展示空間が拡大されました。ロスチャイルド男爵自身も金融機関を退職後、博物館の運営に尽力しました。

1937年にロスチャイルド男爵が亡くなると、遺言により博物館のコレクションは全て大英博物館評議会に寄贈されました。その後、大英博物館から独立したロンドン自然史博物館の一部として、現在もその歴史と伝統を引き継いでいます。1970年代には、ロンドン自然史博物館の鳥類部門の本拠地となり、コレクションはさらに充実しました。2007年には名称が「The Natural History Museum at Tring」に変更されました。

驚異的なコレクションの数々

ロスチャイルド男爵が遺したコレクションは、哺乳類剥製標本2000点、鳥類剥製標本2000点、鱗翅目標本200万点、鳥類仮剥製標本30万点、ゾウガメ標本144点、卵殻標本20万組、そして関連書籍3万点に及びました。これは個人コレクションとしては驚異的な規模であり、実際には1932年にアメリカ自然史博物館に売却された膨大な鳥類仮剥製標本を差し引いても、その規模は計り知れません。

現在では、ロスチャイルド男爵以降の研究者や博物館関係者の努力により、鳥類標本コレクションは115万点以上にまで増加し、その数は現在も増え続けています。他に、17000点の液浸標本、15000点の骨格標本、70万点の仮剥製標本、40万組の卵殻標本、そして4000点の巣などが収蔵されています。仮剥製標本の中には、ダーウィンやクックの探検で採取された貴重な標本も含まれています。

博物館の見どころ

博物館には8つの展示室と2つの店舗があり、19世紀の剥製技術の見本ともいえる、質の高い展示が魅力です。絶滅鳥類や哺乳類の標本、例えばクアッガ、フクロオオカミ、オオウミガラスの剥製、モアやドードーの復元標本など、非常に貴重な展示物が多数あります。特にクアッガの剥製は、世界に16体しか残っていない希少なものです。

家畜犬のコレクションは、人為的な繁殖による形態の変化を分かりやすく示しており、世界中の犬種の多様性を垣間見ることができます。

各階層には様々なテーマに沿った展示室があり、鳥類、哺乳類、爬虫類、昆虫など、多様な生物の標本を見ることができます。また、子供たちが標本に触れながら学習できるインタラクティブな展示室もあり、幅広い年齢層が楽しめるよう工夫されています。

アクセス情報

開館時間は、月曜日～土曜日が10:00～17:00、日曜日が14:00～17:00です。休館日は12月24日～28日です。入場料は無料です。最寄りのトリング駅からは3kmほど離れており、バスやタクシー、または自家用車でのアクセスが便利です。博物館には無料駐車場があり、満車の場合は周辺の駐車場を利用できます。

まとめ

ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館は、2代ロスチャイルド男爵の生涯をかけた情熱と、世界中から集められた貴重なコレクション、そして長年にわたる研究者たちの努力によって築き上げられた、鳥類学研究の拠点であり、自然史博物館として貴重な存在です。無料公開なので、ぜひ一度訪れて、その貴重なコレクションを体感してみてください。

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