ウォレス・ハートリー

ウォレス・ヘンリー・ハートリー

ウォレス・ヘンリー・ハートリー（1878年 6月2日 - 1912年4月15日）は、イギリスのヴァイオリニストであり、主に客船「タイタニック」のバンドマスターとして知られています。彼はバンドメンバーたちとともに、タイタニック号の悲劇的な沈没事故において最後の瞬間まで演奏を続け、勇敢な姿勢が後世に語り継がれることとなりました。

来歴

ハートリーはイングランド北部のランカシャー州コルンで生まれ育ちました。その後、家族はウェスト・ヨークシャー州デュースベリーに移ります。学校でヴァイオリンを学んだ彼は、1909年にキュナード・ラインで音楽家としてのキャリアをスタートさせ、主に客船「モーリタニア」で活動していました。2012年4月、ハートリーはホワイト・スター・ラインの豪華客船タイタニック号でバンドマスターの職を得ることになります。

タイタニック号の名声を考えたハートリーは、最近婚約したばかりのマリア・ロビンソンを残して、この新しい仕事に挑戦することを決意しました。彼のバンドは、より多くの場面で音楽を奏でる機会を得ることが期待されていました。

バンドの構成

ハートリーが指揮したバンドは、8人のメンバーで構成されていました。

- ウォレス・ハートリー（バンドマスター、ヴァイオリニスト）
- ロジャー・マリー・ブリクー（チェリスト）
- ジョン・フレデリック・プレストン・クラーク（ベーシスト）
- パーシー・コーネリアス・テイラー（チェリスト）
- ジョージ・アレクサンドル・クリンズ（ヴィオリスト）
- W・セオドア・ロナルド・ブレイリー（ピアニスト）
- ジョック・ロウ・ヒューム（ヴァイオニスト）
- ジョン・ウェズリー・ウッドワード（チェリスト）

ハートリーは、船内の様々な場所で演奏を行い、特にティータイムやディナー後のコンサート、日曜礼拝の際にリーダーとして活躍していました。バンドは、客室やレストランで快適な雰囲気を提供するために多様な曲を演奏していました。

タイタニック号の沈没

1912年4月15日、タイタニック号は氷山に衝突し、急速に沈み始めました。この危機的状況の中で、ハートリーと彼のバンドは乗客が冷静に行動できるようにラグタイムの曲を演奏し続けました。彼らは、不安に駆られる乗客たちを元気づけるために奮闘し、最後の瞬間まで音楽を送り続けたと言われています。

生き残った乗客たちの証言によると、バンドは最後の最後まで鞭撻するかのように演奏していました。そのとき演奏された曲は不明ですが、『主よ御許に近づかん』であったと広く信じられています。一方で、無線技師のハロルド・ブライドによると、彼が耳にしたのは『秋』という曲だったという証言も存在します。

後の評価と遺族

事故の発生から約二週間後、ハートリーの遺体はマッケイ・ベネットによって引き上げられました。彼の遺体は、ホワイト・スター・ラインの汽船「アラビック」を通じて母国イギリスに運ばれ、葬儀には多くの人々が参列しました。約1,000人が彼の葬儀に出席し、さらに40,000人が葬列を見送ったと記録されています。

彼の遺体には、彼が1910年に婚約者から贈られたヴァイオリンが結びついた状態で発見されました。このヴァイオリンには「ウォレスへ、婚約を記念してマリアより」という刻印が施された銀製の飾り板が取り付けられており、後に高額で落札されることになります。

演じた人物

彼の物語は、映画や舞台でもたびたび取り上げられており、これまでに多くの俳優たちがハートリーを演じる機会を得ています。特に印象深いのは、1958年の『SOSタイタニック』や1997年の『タイタニック』などがあります。

結論

ウォレス・ヘンリー・ハートリーは、勇気と献身をもって音楽を奏でることで、タイタニック号の悲劇を乗客たちに少しでも軽減しようとした人物です。彼の音楽とその行動は、歴史の一ページに深く刻まれ、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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