ウォーチャイルド

ジェスロ・タルの7作目のスタジオアルバム『ウォーチャイルド』（1974年発表）は、バンドの歴史において特筆すべき作品です。当初は、前作『パッション・プレイ』を基にした映画のサウンドトラックとして企画されましたが、ハリウッドの制作会社の要求により映画化は頓挫、アルバム単体としてリリースされることになりました。

このアルバムには、過去の作品からの流用や未発表曲が含まれています。「スケーティング・アウェイ」、「バングル・イン・ザ・ジャングル」、「オンリー・ソリテアー」の3曲は、『パッション・プレイ』の原型となった作品からの流用です。「トゥー・フィンガーズ」は『アクアラング』制作時のアウトテイクを再構成した楽曲です。これらの楽曲の再利用は、アルバムの多様な音楽性を示す要素となっています。

商業的な成功は、アメリカとイギリスで対照的な結果となりました。アメリカではBillboard 200で2位を記録し、バンドにとって5作目の全米トップ10アルバムとなりました。シングル「バングル・イン・ザ・ジャングル」もBillboard Hot 100で12位を記録し、バンドにとって2作目の全米トップ40シングルとなりました。一方、イギリスでは以前の作品ほどの成功は収めず、チャートの順位も低めでした。ノルウェーではアルバム・チャートで好成績を収め、トップ20入りを果たしています。

批評家の評価は様々です。オールミュージックのBruce Ederは、過去の作品ほど印象に残らないと評しつつも、「ウォーチャイルド」や「レディーズ」、「ザ・サード・フーラー」といった楽曲を高く評価しています。「レディーズ」ではアンダーソンのフルート演奏が秀逸であると評し、「ザ・サード・フーラー」はタルのフォーク曲の中でも特に魅力的な楽曲であると述べています。

その後、2002年にはリマスターCDが発売され、LPレコード収録時間の制約により外されていた7曲がボーナス・トラックとして追加収録されました。「レインボウ・ブルーズ」は後にブラックモアズ・ナイトによってカバーされるなど、高い評価を得ています。さらに2014年には、リリース40周年を記念した『シアター・エディション』が発売されました。このエディションには、2枚のCDと2枚のDVDが収録され、2002年リマスターCDに収録されていたボーナス・トラックに加え、「Good Godmother」や「Tomorrow Was Today」といった未発表曲、タイトル曲の別バージョン、映画のサウンドトラック用に構想されていたオーケストラバージョンなども収録されています。

アルバムに参加したミュージシャンは、イアン・アンダーソン（ボーカル、フルート、ギターなど）、マーティン・バー（ギター）、ジョン・エヴァン（キーボード）、ジェフリー・ハモンド（ベース）、バリモア・バーロウ（ドラムス）など、バンドの主要メンバーに加え、オーケストラ・アレンジを担当したデヴィッド・パーマーも参加しています。

『ウォーチャイルド』は、商業的な成功と批評家の評価が必ずしも一致しなかった作品ではありますが、ジェスロ・タルの音楽的多様性と実験性を示す重要な作品であり、バンドの代表作の一つとして高い評価を受けています。映画化計画の頓挫という背景や、過去の楽曲の再利用、そしてリマスター盤や40周年記念盤への未発表曲の追加など、このアルバムには多くの興味深いエピソードが詰まっていると言えるでしょう。

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