ウクライナの英雄都市

ウクライナの英雄都市

ウクライナの英雄都市（ウクライナ語: Місто-герой України）は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻中に際立った英雄的行為を示した都市に与えられるウクライナの栄誉称号です。この称号は、ソビエト連邦時代の英雄都市の概念を受け継ぎつつ、ウクライナ独自の文脈で創設されました。

歴史的背景

ソビエト連邦時代には、大祖国戦争（第二次世界大戦における独ソ戦）で並外れた勇気と決意を示した都市に対して「英雄都市」の称号が授与されました。この称号は、ソ連で最も名誉ある賞の一つである「ソ連邦英雄」賞と関連付けられており、都市の住民全体の英雄的行為を称えるものでした。

ソ連時代には12の都市が英雄都市の称号を授与され、そのうち4都市（オデッサ、セヴァストポリ、キーウ、ケルチ）は、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国に位置していました。これらの都市の地位は、ソ連崩壊後、ウクライナに引き継がれました。

英雄都市という用語の使用は、1942年に遡り、1945年5月1日にヨシフ・スターリンが「英雄都市レニングラード、スターリングラード、セヴァストポリおよびオデッサ」に敬意を表する礼砲を命じたことで公式に使用されました。1961年にはキーウが「英雄都市」と称され、1965年5月8日に英雄都市の称号が正式に制度化されました。

ウクライナにおける再定義

2022年、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ウクライナは新たな「英雄都市」の称号を創設しました。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2022年3月6日に政令第111号を発令し、この称号を導入しました。この称号は、現代ウクライナの称号「ウクライナ英雄」に相当する都市に対する栄誉であり、ウクライナの防衛に貢献した都市を称えるものです。

政令第111号では、キーウ、オデッサ、セヴァストポリ、ケルチの地位を更新するとともに、新たにチェルニーヒウ、ホストメリ、ハルキウ、ヘルソン、マリウポリ、ヴォルノヴァーハの各都市に英雄都市の称号を授与しました。さらに、2022年3月25日には、ブチャ、イルピン、アフトゥイルカ、ムィコラーイウの4都市も英雄都市に加わりました。

英雄都市の概要

以下に、各英雄都市が経験した戦闘や状況を記します。

チェルニーヒウ: 2022年2月24日に始まった包囲戦で、ロシア軍の占領を阻止し、ウクライナ軍はロシア軍の装備や文書を相当数押収しました。包囲は3月31日に解除されました。
ホストメリ: アントノフ国際空港を巡る激しい戦闘が行われました。ロシア軍による攻撃で、世界最大の航空機An-225が破壊されました。ロシア軍は撤退し、4月2日にウクライナ軍が奪還しました。
ハルキウ: ロシア軍の攻撃をウクライナ軍が撃退し、激戦の末、5月14日にロシア軍は撤退しました。この戦いは「21世紀のスターリングラード」とも呼ばれました。
ヘルソン: 2022年3月2日にロシア軍が占領した最初の主要都市となりました。占領期間を経て、ウクライナ軍が奪還を目指し、戦いが続いています。
マリウポリ: 2022年2月24日から始まった包囲戦では、ロシア軍と分離主義勢力が激戦を繰り広げ、5月20日にロシアが制圧を宣言しました。
ヴォルノヴァーハ: ロシア軍とDPR軍による激しい戦闘の結果、2022年3月12日にDPR軍が街を占領し、大部分が破壊されました。
イルピン: 2022年2月27日に始まった戦闘で、ロシア軍は一部を占領しましたが、3月28日にウクライナ軍が奪還しました。
ブチャ: 2022年2月27日に戦闘が始まり、3月31日にウクライナ軍が奪還しました。その後の調査で、ロシア軍による住民虐殺の証拠が明らかになり、「ブチャの虐殺」として国際的に非難されています。
アフトゥイルカ: 2022年2月24日に戦闘が始まり、3月26日までにロシア軍は撤退しましたが、その後も砲撃が続きました。
ムィコラーイウ: 2022年2月26日にロシア軍が侵入を試みましたが、4月8日に撤退しました。その後も砲撃は続いています。


これらの英雄都市は、ウクライナの独立と領土保全のために戦い抜いた象徴として、その勇気と犠牲が後世に語り継がれるでしょう。

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