チェルニーヒウ

ウクライナ北部の歴史都市、チェルニーヒウ

チェルニーヒウは、ウクライナ北部チェルニーヒウ州に位置する州都であり、古くから歴史と文化の中心地として栄えてきました。デスナ川沿いに広がるこの都市は、ウクライナ語で「Чернігів」、ロシア語で「Чернигов」と呼ばれ、キエフ・ルーシ時代やヘーチマン国家時代の貴重な文化財を数多く残しています。

悠久の歴史

7世紀にはチェルニーヒウ柵が築かれ、907年には東スラヴ人のシヴェリャヌィ族の中央都市として『ルーシ年代記』に登場します。11世紀から13世紀にかけては、キエフ大公国の分国であるチェルニーヒウ公国の中心都市として繁栄を極めました。しかし、1239年にはバトゥ率いるモンゴル軍の侵攻を受け、略奪されました。その後、モンゴル帝国の属国となったブリャンスク公国の都市となり、1353年にリトアニア大公国によって占領されるまでモンゴルの支配下に置かれました。

15世紀にはクリミア・タタール人の襲撃にも遭い、略奪されるなど、幾多の困難を経験しました。1503年にはモスクワ大公国に征服され、チェルニーヒウ要塞が築かれました。その後、1618年のデウリノ平和条約によってポーランド・リトアニア共和国領となり、1623年には自治権と市章が与えられました。1648年にはウクライナ・コサックの蜂起によりヘーチマン国家が成立し、チェルニーヒウはチェルニーヒウ連隊の中心地として、政治・経済・文化の中心都市として発展しました。

17世紀後半から18世紀にかけては、ロシア帝国の支配下に入りますが、1700年にはチェルニーヒウ・カレッジが創立されるなど、教育・文化面でも発展を続けました。19世紀には南部ロシアの経済的拠点として成長し、煉瓦工場、蝋燭工場、石鹸工場などが設立されました。1917年のロシア革命後には、ウクライナ人民共和国の一部となりましたが、その後、ソビエト連邦の支配下に入り、第二次世界大戦中には大きな損害を受けました。1968年には戦後の復興が完了し、市の中心部はゼロから再建されました。1991年にはウクライナの独立に伴い、チェルニーヒウ州の州都として新たな歴史を刻み始めました。

近年の出来事

2022年3月からのロシアのウクライナ侵攻では、チェルニーヒウ市も甚大な被害を受けました。市内の学校や高層マンションが攻撃され、多くの民間人が犠牲となりました。インフラも破壊され、電気や水道の供給が途絶えるなど、市民生活は大きな打撃を受けました。2023年8月にもミサイル攻撃が発生し、多くの死傷者が出ました。

人口と民族構成

チェルニーヒウの人口は、歴史を通して変遷してきました。12世紀には約2万5千人であった人口は、19世紀には数千人規模に減少しましたが、その後は増加し、2001年には約30万人に達しました。民族構成は、ウクライナ人が多数を占め、ロシア人、ベラルーシ人などが続いています。言語は、ウクライナ語が主要言語ですが、ロシア語話者もいます。

観光と文化

チェルニーヒウには、キエフ・ルーシ時代やヘーチマン国家時代の貴重な歴史的建造物が多く残されています。救世主の変容の大聖堂、ボルィスとグリーヴの大聖堂、イッリャの大聖堂、生神女就寝大聖堂、イェレーツィシク生神女就寝修道院、聖パラスケヴァ金曜日教会など、歴史を感じさせる建造物が観光の目玉となっています。また、チェルニーヒウ・カレッジやルィゾグーヴの屋敷など、ヘーチマン国家時代の建造物も訪れる価値があります。博物館や劇場なども充実しており、豊かな文化に触れることができます。

姉妹都市

チェルニーヒウは、世界各国に姉妹都市を有しており、国際交流も盛んです。ホメリ（ベラルーシ）、メミンゲン（ドイツ）、タルノブジェク（ポーランド）、ペタク・チクヴァ（イスラエル）、ガブロヴォ（ブルガリア）、フラデツ・クラーロヴェー（チェコ）、オグレ（ラトビア）、プリレプ（マケドニア）など、多くの都市と友好関係を築いています。

チェルニーヒウは、歴史と現代が複雑に交錯する都市であり、その魅力は多くの人々を惹きつけてやみません。

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