ウクライナ・ポーランド戦争 (1918年‐1919年)

ウクライナ・ポーランド戦争：ガリツィアを巡る紛争

ウクライナ・ポーランド戦争は、1918年から1919年にかけて、第一次世界大戦後の混乱期に、ガリツィア地方の支配権をめぐって、西ウクライナ人民共和国とポーランド共和国の間で繰り広げられた武力紛争です。

戦争の背景

この戦争の背景には、オーストリア・ハンガリー帝国の崩壊という大きな出来事がありました。長年、帝国の支配下にあったガリツィア地方は、民族構成が複雑で、ウクライナ人とポーランド人が混在していました。帝国の崩壊後、両民族はそれぞれ独立を目指しましたが、ガリツィアの領有権を巡って対立が激化しました。

1918年11月1日、ポーランド軍が西ウクライナの中心都市であるリヴィウに侵攻したことが、戦争の直接的なきっかけとなりました。この侵攻に対し、西ウクライナ人民共和国は抵抗しましたが、ポーランド側の優勢な戦力に押され、徐々に劣勢に立たされました。

国際社会の介入

第一次世界大戦に勝利した連合国は、ウクライナ人をドイツ・オーストリアの同盟者と見なしたため、ポーランドを支援する姿勢を取りました。また、ハンガリーとルーマニアも、ポーランド側について参戦し、ウクライナのザカルパッチャとブコビナを占領しました。これにより、ウクライナ側の状況はさらに厳しくなりました。

戦争の終結とその後

1919年7月、ウクライナ軍は反撃を試みましたが、国際的な支援や物資の不足により、撤退を余儀なくされました。同年7月17日、ポーランド軍がガリツィア全地域を確保し、戦争は終結しました。西ウクライナ人民共和国の政府は、ウクライナ人民共和国へ亡命しました。

戦争の結果、ガリツィア地方はポーランドの支配下に入り、ウクライナ人の民族自決の試みは挫折しました。しかし、この戦争は、ウクライナ人の民族意識を高め、その後の独立運動に大きな影響を与えました。

現代への影響

ウクライナ・ポーランド戦争は、両国間の関係に深い影を落としました。特に、第二次世界大戦中のヴォルィーニ大虐殺など、両民族間の対立はその後も長く尾を引きました。しかし、冷戦終結後、両国は関係改善に努め、現在では戦略的なパートナーシップを築いています。ただし、歴史認識の問題は依然として存在し、両国関係の不安定要素となっています。

この戦争は、民族自決、領土紛争、大国の介入など、現代にも通じる様々な問題を提起しています。その歴史を学ぶことは、国際政治の複雑さを理解し、平和な国際秩序を構築するために不可欠です。

参考文献
伊東孝之, 井内敏夫, 中井和夫編　『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 (世界各国史; 20)－東京: 山川出版社, 1998年. ISBN 9784634415003
黒川祐次著　『物語ウクライナの歴史 : ヨーロッパ最後の大国』 (中公新書; 1655)－東京 : 中央公論新社, 2002年. ISBN 4121016556
中井和夫著　『ウクライナ・ナショナリズム』東京大学出版会、1998年.

外部リンク
ウクライナ・ポーランド戦争。目撃者の記録 - ウェイバックマシン（2008年1月16日アーカイブ分）
「ウクライナ・ポーランド戦争」『ウクライナ百科事典』
ガリツィアの歴史

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