ウクライナ支援疲れ

ウクライナ支援疲れとは

「ウクライナ支援疲れ」とは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、国際社会がウクライナに対して行ってきた様々な支援活動、およびロシアやベラルーシに対する制裁措置の結果、支援国やその市民の間で生じている、支援継続に対する疲弊感や見直しを求める動きを指します。この言葉は、報道機関などで広く用いられるようになり、「ウクライナ疲れ」とも呼ばれています。

ウクライナへの支援

2022年 2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナのドンバス地域での「特別軍事作戦」の実施を発表しました。これに対し、日本を含む西側諸国は、ウクライナへの軍事・人道支援を次々と表明。同時に、ロシアはウクライナを支援する国々を「非友好的な国と地域」のリストに加えました。

侵攻長期化による国際社会の変化

当初、多くの国々は「自由と民主主義を守る戦い」という大義のもと、ウクライナへの強い共感と連帯を示しました。しかし、ロシアに対する経済制裁の影響で石油や天然ガスなどの価格が高騰し、侵攻が長期化するにつれて、支援国の経済的負担が増大。この状況が「支援疲れ」という言葉を生み出す背景となりました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、このような状況下でも、更なる支援を求める発言を繰り返しました。しかし、時に配慮を欠くとも受け取れるその姿勢は、支援国の疲弊感を増幅させ、一部では支援の停滞を招いているとして非難の声も上がっています。

支援疲れが深刻化するにつれて、停戦を望む国々が現れ始め、アメリカ政府関係者はウクライナが停戦に前向きな姿勢を示すことで、支援国側の懸念に対応するよう促しました。2023年10月には、パレスチナ・イスラエル戦争に関連して、ゼレンスキー大統領がイスラエル訪問を申し出たものの断られ、国際社会からの支持を失う一因となりました。さらに、2023年6月のウクライナ反攻が失敗に終わったと評価され、当時のウクライナ軍総司令官がそれを認める発言をしたと報道されました。

また、2023年秋にはスロベニアで「ウクライナへの軍事支援」に反対する左派政党が政権を奪還。同年11月にはオランダで極右政党が第一党となり、移民・難民の受け入れに反対する姿勢を示しました。2024年2月には、アメリカ上院議会でウクライナ支援の緊急予算採決が妨害され、大統領再選を目指すトランプ氏の影響が指摘されています。

2024年6月には、ウクライナ主導で平和サミットが開催されましたが、共同宣言に賛同したのは参加92カ国中77カ国にとどまりました。篠田英朗氏は、この背景には「戦争長期化に対する忌避感」「欧米諸国への不信感」「反欧米陣営の求心力」の3つがあると指摘しています。

日本に対する反応

侵攻後の2022年3月、ゼレンスキー大統領は米国議会でのリモート演説で、真珠湾攻撃やアメリカ同時多発テロ事件を例に挙げ、「空から攻撃され、罪のない市民が殺されたことを思い出してほしい」と訴えました。この発言は日本国内で困惑を呼び、特に真珠湾攻撃を例に挙げたことに対して多くの批判的な意見がSNSに投稿され、「真珠湾攻撃」がトレンド入りする事態となりました。

また、2022年4月には、ウクライナ政府の公式Twitterアカウントが、昭和天皇、ヒトラー、ムッソリーニの顔写真を並べた動画を投稿しました。この動画は国内外から批判が殺到し、削除されました。磯崎仁彦内閣官房副長官は、この件について「ヒトラー、ムッソリーニと昭和天皇を同列に扱うことは全く不適切で、極めて遺憾だ」と述べ、ウクライナ大使館に抗議しました。その後、ウクライナ大使館は「制作者の歴史認識不足と思われる」と釈明し謝罪しました。

まとめ

「ウクライナ支援疲れ」は、ウクライナ侵攻の長期化に伴い、支援国が経済的、政治的、社会的に様々な課題に直面する中で生じた現象です。この言葉は、支援を続けることの難しさを表すと同時に、国際社会の連帯や協力のあり方について、改めて考え直す必要性を示唆しています。

ウクライナ支援疲れ