ウケユリ

ウケユリ（請百合）

ウケユリ（学名: Lilium ukeyuri）は、ユリ科に属する落葉性の多年草で、主に鹿児島県の奄美大島とその周辺の島々に自生しています。この植物は、日本の特有種であり、地元の環境において重要な役割を果たしています。別名として、受百合や承百合とも呼ばれることがありますが、商業名としては雅味を取り入れたタマウケユリ（玉請百合、玉受百合）という名前も使われています。

生態と特徴

ウケユリは、明るい林の中や岩場で見られる植物であり、環境に適応した特徴的な形状を持っています。鱗茎は直径4-5cmの雪白卵形で、そこから伸びる茎は直立し、通常は緑色ですが、下部が紫色を帯びることもあります。自生地での茎の長さは最大1メートルほどに成長し、岩場では水平に近い角度で茎を伸ばします。

葉は笹の葉に似た披針形で、長さは15-18cmあり、茎の上部には1-2輪の大きな白い花が咲きます。花は強い香りを放ち、基部は漏斗型で淡緑色を帯びているのが特徴です。原生地では、毎年5月下旬から6月にかけて花が開き、その後、長さ約5cmの長楕円形の蒴果ができます。

歴史

1804年に出版された「成形図説」ではウケユリが承百合として記載されています。ウケユリの名前の由来については、花が上向きに咲くことや、浮野（うけの）という古名を持つ地域で多く見られ、最も香りが高いことから名付けられたとされています。現在では、地域名に基づいて「請百合」と呼ばれるのが一般的です。

明治時代になると、日本産の百合が輸出されるようになり、ウケユリも各地で栽培が始まりました。1884年には万国園芸博覧会に出品されたものの、咲かなかったために注目は集まらず、1890年には牧野富太郎が栽培種を描写した作品が、多くの百合図譜の参考となりました。1893年にはイギリスへ「Uke-yuri」として輸出され、後に王立園芸協会のフラワーショーで高評価を得ました。

このように、ウケユリは長い歴史を持ち、多くの学名が付けられてきました。その間に、他種との雑種性についての意見もありましたが、1949年の研究でその可能性は否定されました。また、1979年にはオリエンタル・ハイブリッドの改良に成功するなど、新たな品種が生み出されています。

保護状況

近年の道路工事や園芸採取により、ウケユリの自生個体数は減少しています。これに伴い、環境省とIUCNのレッドリストでは「絶滅危惧IA類（CR）」に分類されています。鹿児島県のレッドデータブックでも同様に「絶滅危惧Ⅰ類」とされています。このため、鹿児島県はウケユリを県条例に基づき保護する取り組みを進めています。

ウケユリ自生地は2008年4月22日より、鹿児島県の天然記念物に指定されており、その保護が進められています。特に自生地の環境保護が、ウケユリの生息を守るための重要な課題となっています。

結論

ウケユリは、特有の美しさと香りを持つ日本の植物であり、その保護が急務です。自然環境における重要性を持つこの植物が、次世代にも受け継がれていくことを願っています。

もう一度検索