ウシエビ

ウシエビ（ブラックタイガー）

分類と分布

ウシエビ（学名：Penaeus monodon）は、十脚目クルマエビ科に属する大型のエビです。インド太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布し、食用として世界中で利用されています。別名として「ブラックタイガー」という名前がよく知られています。

形態

成体の体長は30cmほどに達し、クルマエビ科の中でも最大級の大きさを誇ります。最大で36cm、体重600gという記録も存在します。体は前後に細長く、額角には上縁に7～8個、下縁に2～3個の鋸歯があります。頭胸甲の背面中央には額角から続く隆起があり、側溝は前半部に限定されます。体色は灰褐色で、不明瞭な黒い縞模様がありますが、新鮮な個体では腹部や歩脚に黄色の縞模様が見られます。

クルマエビと似ていますが、ウシエビは全身の黒みが強く、縞模様も不明瞭です。また、額角の鋸歯の数や、頭胸甲の側溝が前半部にしかない点が異なります。

生息環境と食性

ウシエビは、浅い海の砂泥底に生息しますが、汽水域や淡水域にも適応できます。食性は雑食で、藻類、貝類、多毛類などを捕食します。

利用

食用

ウシエビは、食用として非常に重要な種類です。東南アジアを中心に養殖が盛んに行われており、日本を含む世界中に流通しています。日本では、輸入エビの約4割を占める重要な種であり、主な輸入元はインドネシア、インド、ベトナムです。クルマエビ科の中では大型で成長も早く、養殖に適しています。

生の状態では黒っぽいですが、加熱すると薄紅色に変化します。日本では国産のクルマエビよりも安価に入手できるため、エビフライ、天ぷら、塩ゆでなど、様々な料理で利用されています。

養殖の課題

ウシエビの養殖は、マングローブや汽水域の環境破壊、養殖場からの排水による環境汚染などの問題を抱えています。また、高密度での飼育は伝染病の蔓延を招きやすく、伝染病予防のための抗生物質の使用や、流通に関わる関税問題なども課題となっています。これらの問題を解決するために、世界中で研究が進められています。

養殖の歴史

台湾では、1968年に廖一久氏がウシエビの種苗生産に成功し、エビ養殖の基礎を築きました。1980年代には養殖産業が急速に発展し、一時日本にも年間約4万トンが輸入されていました。しかし、ウイルスの蔓延により台湾のエビ養殖は崩壊し、その後はタイやインドネシアからの輸入が増加しました。これらの国々への養殖技術の普及は、台湾の技術者によって行われたと言われています。

しかし、タイでも1995年以降、ウイルス病の被害によりウシエビの養殖量が減少し、現在はバナメイエビが養殖の主力となっています。

その他

日本では、「東南アジアのエビ養殖場に出資すれば利益になる」という投資詐欺事件（ワールドオーシャンファーム詐欺事件）が発生しました。また、日本では浜名湖などに生息しており、漁獲量は少ないものの産地周辺では刺身として消費されています。

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