ウスバシロチョウ

ウスバシロチョウ（薄羽白蝶）

ウスバシロチョウ（Parnassius citrinarius）は、アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科に属するチョウの一種で、その名の通り、薄い翅を持つ白いチョウです。かつては「ウスバアゲハ」とも呼ばれていました。

分布

ウスバシロチョウは、東アジアに広く分布しており、具体的には中華人民共和国東部、朝鮮半島、そして日本で見られます。日本国内においては、北海道から本州、四国にかけて分布していますが、北方系のチョウであるため、西南日本ではその分布が限られています。

特徴

ウスバシロチョウの前翅長は25mmから35mm程度です。翅は半透明で、その名の通り白い色をしていますが、黒い斑紋があるのが特徴です。また、体毛は黄色く、細かい毛で覆われています。

ウスバシロチョウは、年に1回発生するチョウで、その時期は5月から6月頃です。ただし、寒冷地では7月から8月頃に発生することもあります。卵で越冬し、2月から3月頃に孵化します。興味深いことに、日本の日本海側の多雪地帯に生息する個体は黒っぽく、太平洋側の低山地に生息する個体は白い傾向があります。

幼虫の食草は、ケシ科の植物で、ムラサキケマン、エゾエンゴサク、ヤマエンゴサクなどが知られています。また、ウスバシロチョウは、蛹になる際にマユを作る数少ないチョウとしても知られています。

分類

ウスバシロチョウは、かつてはParnassius glacialisの亜種（P. g. citrinarius）とされていましたが、近年の研究により、独立種P. citrinariusとして扱われるようになりました。

ウスバシロチョウには、以下の亜種が知られています。

P. c. citrinarius
P. c. shikokuensis

近縁種

ウスバシロチョウの近縁種としては、以下のものが挙げられます。

ヒメウスバシロチョウ Parnassius stubbendorfii hoenei Schweitzer, 1912
ウスバキチョウ Parnassius eversmanni daisetsuzanus Matsumura, 1926

種の保全状況評価

日本では、ウスバシロチョウは地域によって絶滅の危機に瀕しています。茨城県では、レッドリストにおいて絶滅危惧種の指定を受けています。東京都においては、北多摩で情報不足、本土部、南多摩と西多摩でランク外の指定を受けています。

参考文献

猪又敏男（編・解説）、松本克臣（写真）『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月。ISBN 4-635-06062-4。
木野田君公 『札幌の昆虫』 北海道大学出版会、2006年、ISBN 4-8329-1391-3。
白水隆 『日本産蝶類標準図鑑』 学習研究社、2006年、ISBN 4-05-202296-3。

関連項目

アゲハチョウ科

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