ルイ・ジョーダン

ルイ・ジョーダン（1908年7月8日 - 1975年2月4日）は、アメリカ合衆国を代表する歌手、サックス奏者であり、ジャンプ・ブルースという音楽ジャンルを確立した立役者の一人です。ビッグバンド・ジャズとブルースの要素を巧みに融合させた彼の音楽は、1940年代から1950年代初頭にかけて数々のヒットを飛ばし、彼を「キング・オブ・ジュークボックス」という称号にまで押し上げました。

アーカンソー州ブリンクリーに生まれたジョーダンは、チック・ウェブ楽団でキャリアをスタートさせます。同楽団にはのちにジャズ界の巨匠となるエラ・フィッツジェラルドも在籍しており、ジョーダンとフィッツジェラルドは同時期に同楽団で活動していました。しかし、1938年、ジョーダンはフィッツジェラルドと共に独立を図り、チック・ウェブ楽団を解雇されます。

解雇後、ジョーダンは仲間と共にElks Rendezvous Bandを結成し、同年デッカ・レコードと契約。ここから彼の黄金時代が始まります。1942年には「ホワット・ザ・ユース・オブ・ゲッティン・ソバー」が『ビルボード』誌のR&Bチャートで1位を獲得。続く1944年には「G.I.ジャイヴ」がR&Bチャートとポップチャートの両方で首位を獲得する快挙を成し遂げます。1945年にはビング・クロスビーとのデュエット曲「マイ・ベイビー・セッド・イエス」がポップチャートで14位にランクインするなど、数々のヒット曲を世に送り出しました。

1946年にはエラ・フィッツジェラルドとのデュエット「ストーン・デッド・イン・ザ・マーケット」がR&Bチャート1位、さらに「チュー・チュー・チ・ブギ」が18週に渡り（連続ではないものの）1位を記録するなど、まさにジョーダンの全盛期でした。同年にヒットした「エイント・ザット・ジャスト・ライク・ア・ウーマン」は、その後のロックンロールの先駆けとなるイントロで始まり、チャック・ベリーの「ジョニー・B.グッド」にも影響を与えたと言われています。

デッカ・レコード在籍中には実に18曲ものR&Bチャート1位を獲得しましたが、1952年以降はヒットに恵まれません。1954年にはデッカを離れ、マーキュリー・レコードなど複数のレーベルで活動を続けました。1956年にはクインシー・ジョーンズがプロデュースを手掛けたヒット曲集『サムバディ・アップ・ゼア・ディグス・ミー』を発表しました。

同時代の多くのR&Bアーティストが貧窮に苦しむ中、ジョーダンは60年代にヨーロッパで再評価を受け、小規模なツアーを行い、フランスのレーベルからもアルバムをリリースするなど、晩年は比較的恵まれた生活を送りました。1975年、カリフォルニア州の自宅で心臓発作により亡くなり、妻の故郷であるセントルイスに埋葬されました。

ルイ・ジョーダンの音楽は、後世のミュージシャンにも多大な影響を与えました。B.B.キングは彼の曲をしばしば演奏し、1999年にはジョーダンに捧げたアルバム『レット・ザ・グッド・タイムス・ロール〜ザ・ミュージック・オブ・ルイ・ジョーダン』を発表。1987年にはロックの殿堂入りを果たし、1990年代には彼のヒット曲を元にしたブロードウェイミュージカル『Five Guys Named Moe』も上演されました。彼の音楽は、ジャンプ・ブルースというジャンルを確立し、後のロックンロールにも大きな影響を与えた、20世紀音楽史における重要な存在と言えるでしょう。

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