ズート・シムズ

ズート・シムズ：スウィングを極めたテナー・サックス奏者

ズート・シムズ（Zoot Sims, 1925年10月29日 – 1985年3月23日）は、アメリカ合衆国出身のジャズ・サクソフォーン奏者であり、特にテナー・サックスとソプラノ・サックスの名手として知られています。本名はジョン・ヘイリー・シムズ（John Haley Sims）。愛称の「ズート」は、カリフォルニアのケニー・ベイカー楽団在籍時に名付けられました。その名前は、後にテレビ番組のキャラクターにも使用されるほど親しまれました。

生い立ちと音楽への目覚め

ズート・シムズはカリフォルニア州イングルウッドで、ヴォードヴィル芸人の家庭に生まれました。タップダンサーであった父親から幼い頃から様々なステップを教え込まれ、後に父親の指導を誇らしげに語っています。また、少年時代にはドラムスとクラリネットも習得し、音楽の基礎を築きました。

レスター・ヤングの影響とビッグバンドでの活躍

レスター・ヤングに憧れサックス奏者としての道を歩み始めたシムズは、ベニー・グッドマン、アーティ・ショウ、スタン・ケントン、バディ・リッチなど、数々の著名なビッグ・バンドと共演し、テナー・サックスの演奏に革新をもたらしました。特に、第2期ウディ・ハーマン楽団の「フォー・ブラザーズ」の一員として、その名をジャズ史に刻んでいます。ジャズ・ミュージシャンの間では、スウィング様式における最高のサックス奏者の一人として広く認識されていました。

コンボ活動とアル・コーンとの共演

自身のコンボを率いることも多かったシムズは、ジェリー・マリガン・セクステットやマリガン・コンサート・ジャズ・バンドに参加し、演奏旅行も行いました。1950年代から1960年代にかけては、アル・コーンとの共同リーダーによるクインテットを長期にわたり率い、「アルとズート」名義で数々の録音を残しました。このクインテットは、ニューヨークのクラブ「ザ・ハーフ・ノート」で人気を博しました。

多彩な音楽性と晩年

ズート・シムズはテナー・サックスの高音域を好んでいましたが、アルト・サックスや、晩年にはノーマン・グランツのパブロ・レーベルにアルバムを録音する際、ソプラノ・サックスも演奏しました。また、ジャック・ケルアックのいくつかの録音にも参加しています。1962年には、世界で初めてジャズとボサノヴァを融合させたアルバム『New Beat Bossa Nova』を発表するなど、常に新しい音楽への挑戦を続けていました。

ズート・シムズは、スウィングの伝統を受け継ぎながらも、常に新しい音楽の可能性を追求した偉大なジャズ・サックス奏者として、その音楽は今もなお多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索