ウパーリ経

ウパーリ経について

概要

『ウパーリ経』とは、パーリ仏典の経蔵中部に収められている第56の経典であり、バラモン教やジャイナ教との交流を描写した重要な文献です。この経典は、漢訳として『優波離経』という呼称でも知られています。また、類似の漢訳経典として、『中阿含経』の第133経である「優婆離経」が存在します。

内容の詳細

『ウパーリ経』の中心となる物語は、釈迦がジャイナ教徒であるウパーリに教えを説く場面から始まります。舞台は、マガダ国にあるパーヴァーリカンバ林で、釈迦が滞在している時にディーガタパッシンというジャイナ教徒が訪れます。この訪問者は、三業（身体の行い、口の言葉、心の思い）について、どの要素が最も大切であるかを釈迦に問いかけ、活発な議論を交わします。

この議論 の結果、ディーガタパッシンは「身体」の重要性を主張しますが、釈迦は「心」が最も重要であると説きます。こうした議論は、釈迦の仏教における教義の核心、特に心の持ち方が意識的な行動にどのように影響を与えるかを示しています。

次に、ウパーリはディーガタパッシンが帰ってきた後、釈迦との議論を聞き、彼自身も釈迦に挑戦することを決意します。ウパーリは、釈迦を尋ねて直接問い質すものの、最終的には釈迦の教えに心を動かされ、三宝（仏法僧）への帰依を誓います。そして、彼のこの決断は、仏教の信徒となる転機を表しています。

さらに、この出来事を聞きつけたジャイナ教の教祖であるニガンタ・ナータプッタが登場し、ウパーリに対して反論を試みます。しかし、ウパーリの力強い主張に圧倒され、ニガンタ・ナータプッタは苦境に立たされます。このやりとりは、ウパーリが仏教の教えを受け入れたことだけでなく、ジャイナ教との対立をも象徴的に示しています。

結論

『ウパーリ経』は、仏教が他の宗教との対話の中で進化していく様子を示した貴重な経典です。釈迦が、自らの教義を通じて他者とどのように接し、説得し、信仰の深さを見極めていったかを描写しています。また、この経典は、心の持ち方が身体や言葉にどのように影響を与えるのかという理解を深める手助けにもなります。信仰の転向に至る過程や対話の重要性を教えてくれるこの経典は、仏教徒のみならず、他宗教の理解を深めたいと思っている人々にとっても重要な文献となるでしょう。

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