ウプサラの神殿

ウプサラの神殿：古代北欧異教の聖地

ウプサラの神殿は、かつてスウェーデンのガムラ・ウプサラ（古ウプサラ）に存在したとされる、北欧異教の信仰における重要な聖地です。この神殿の存在は、ブレーメンのアダムによる11世紀の著作『ハンブルク教会史』や、13世紀にスノッリ・ストゥルルソンが著した『ヘイムスクリングラ』などの文献によって知られています。

文献における記述

ハンブルク教会史

ブレーメンのアダムは、『ハンブルク教会史』の中で、「ウブソラ」と呼ばれる有名な神殿について記述しています。それによれば、神殿は金で飾られ、トール、オーディン、フレイの3柱の神像が安置されていました。トールは中央の王座に座り、槌を持っており、オーディンは甲冑を身につけ、フリッコは大きな勃起した陰茎を伴って表現されていたとされます。

アダムは、9年ごとにウプサラで祝祭が開催され、キリスト教徒も贖い金を支払わなければ参加を免れることができなかったと記しています。また、神殿ではあらゆる種類の雄の動物9体が犠牲として捧げられ、その血で神々をなだめるという儀式が行われていました。神殿の近くには大きな木が立っており、泉には生きた人間が投げ込まれることもあったと伝えられています。

ヘイムスクリングラ

『ヘイムスクリングラ』の『ユングリング家のサガ』において、スノッリは、オーディンがログ湖付近に定住し、神殿を建設したと伝えています。ニョルズはノーアトゥンに、フレイはウプサラに住み、それぞれ居住地を与えられました。フレイはウプサラに大きな神殿を建設し、そこにすべての租税を充てたため、ウプサラは富裕になったとされています。

その他の文献と史実

神殿の存在を裏付ける資料は少ないながらも存在します。サクソ・グラマティクスの『デンマーク人の事績』にも触れられており、彼によれば、人間を生贄に捧げる儀式を始めたのはフレイであるとされています。古代北欧のサガやブレーメンのアダム、サクソ・グラマティクスは、ウプサラでの犠牲祭を人々に人気のある祭りとして説明しています。

キリスト教との関係

スウェーデンは北欧で最も遅くまで異教信仰が続いた地域であり、ウプサラの神殿はその象徴でした。キリスト教徒となった王や司教は神殿を破壊しようとしましたが失敗し、キリスト教徒のスウェーデン王は、9年に1度の異教の大犠牲祭の司祭を務めました。しかし、12世紀にキリスト教側が勝利し、神殿跡にキリスト教教会が建設されました。その後、教会が焼失したため、南のウプサラに移転し、ウプサラ大聖堂が築かれました。

考古学による証明

研究者は、神殿がガムラ・ウプサラのどこに位置していたのか、そしてそれが建物であったのかどうかを確定しようとしています。一部の研究者は、神殿がスウェーデンの王の住居と混同されていると考えています。12世紀に現在の石造りのガムラ・ウプサラ教会が建設される以前には、木造の教会が存在し、さらにその前には何らかの建築物があったことがわかっています。

1926年、スーネ・リンドクヴィストは、現在の教会の床下を調査したところ、木造教会の址とヴァイキング時代の柱穴列を発見し、この穴の列がウプサラの神殿の跡だと推測しました。しかし、後の研究により、現在の教会はウプサラの神殿址の上にあるのではないかという説も出ています。2003年と2004年には、地中レーダー探査装置を使った調査が行なわれ、現在の教会の真下に、11世紀の木造のホール跡が発見されています。

ウプサラの神殿は、北欧神話や古代スカンジナビアの宗教儀式を知る上で重要な場所であり、その歴史と位置については、現在も研究が続けられています。

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