ウマル2世 (ウマイヤ朝)

ウマル・イブン＝アブドゥルアズィーズ（ウマル2世）

ウマル・イブン＝アブドゥルアズィーズ（682年 - 720年）は、ウマイヤ朝の第8代カリフ（在位717年 - 720年）であり、2代目正統カリフ、ウマル・イブン＝ハッターブの曾孫にあたる人物です。曾祖父と区別するために、ウマル2世と呼ばれることが一般的です。

生涯

ウマル2世の時代、イスラム帝国はアラブ地域にとどまらず、小アジア、ペルシア、北アフリカ、イベリア半島にまで広がる広大な勢力圏を築き上げていました。ウマイヤ朝は、「コーランか、剣か、貢納か」という言葉に象徴されるように、他宗教に対しては厳しい差別を伴う条件の下で信仰を容認していました。イスラム教に改宗しない者に対しては、人頭税（ジズヤ）を納めることで、財産権と生命権を一定程度保障していました。

しかし、実際にはアラブ人以外の者がイスラム教に改宗しても、ジズヤを納め続けなければならない状況がありました。これは、征服地から納入される多額のジズヤが、イスラム軍が版図を拡大し、維持するための重要な資金源であったためです。しかし、時代が進むにつれて、征服地の人々がイスラム教に改宗するケースが増加し、『コーラン』に記された神の前での平等と現実との乖離に不満を持つ者が増えていきました。

特に、ウマイヤ朝の首都ダマスクス周辺に住むペルシア人改宗者は、イスラム初期に組み込まれたにも関わらず被征服民（マワーリー）として差別され続けることに強い不満を抱いていました。人格者として知られていたウマル2世は、首都周辺の状況を無視できず、ジズヤの廃止を試みましたが、在位期間が短かったため、その試みはほとんど成功しませんでした。

しかし、イスラムの教えに基づく平等を掲げたウマル2世の理想は、次代のアッバース朝がウマイヤ朝打倒の際に掲げた大義と共通するものでした。そのため、ウマイヤ朝の君主の中で、ウマル2世の墓だけはアッバース朝の時代になっても暴かれることはなかったと言われています。彼の短い在位期間における改革の試みは、後の時代に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

アミール・アリ『回教史　A Short History of the Saracens』（1942年、善隣社）

関連項目

ウマイヤ朝

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