ウルク (メソポタミア)

ウルク：メソポタミア文明を代表する古代都市

ウルクは、現在のイラク南部に位置する、古代メソポタミアを代表する都市です。その歴史は非常に古く、紀元前5000年頃にはすでに人が定住していたことが確認されています。紀元前4000年頃～紀元前3100年頃には、この地域の中心都市として繁栄し、この時代は「ウルク期」と呼ばれます。ウルク期には、世界最古の都市国家の一つとして、高度な都市計画や灌漑システムを整備し、人口は5～8万人に達したと推定され、当時世界最大の都市でした。

ウルクの語源と呼称

ウルクの名称は、シュメール語では「ウヌグ」、アッカド語では「ウルク」と呼ばれ、現代アラビア語では「ワルカ」または「アウルク」と呼ばれています。旧約聖書では「エレク」として登場し、ニムロド王が建設した都市の一つとして記述されています。これらの呼称の一貫性から、古代ウルク、聖書のエレク、現代のワルカ遺跡が同一の都市であることが確認されています。

ウルクの歴史

ウルクの建設と発展

ウルクの建設時期は定かではありませんが、神話ではエンメルカル王が建設したと伝えられています。ウルク期には、メソポタミアにおける都市化と国家形成が急速に進展し、ウルクはその中心的な役割を果たしました。この都市の成長は、肥沃なユーフラテス川流域という地理的条件と、灌漑技術の発達によって支えられていました。発掘調査では、東西に二つの神殿地区（エアンナ地区とアヌ地区）を持つ独特の都市構造が明らかになっています。エアンナ地区は女神イナンナ、アヌ地区は天空神アヌに捧げられた神殿が中心でした。市内には運河網が発達し、交易や灌漑に利用されていました。

ウルク期以降

ウルク期以降も、ウルクはメソポタミアにおいて重要な都市であり続けました。ギルガメシュ叙事詩の舞台となったことからも、その影響力の大きさがうかがえます。紀元前2000年頃にはバビロニアとエラムの戦争によって衰退しましたが、セレウコス朝やパルティアの時代にも居住が続けられ、イスラム教のメソポタミア征服直前まで人が住んでいました。

ウルクの考古学的層序

考古学的調査によると、ウルク遺跡は複数の層から成り立っており、それぞれの層が異なる時代の都市遺跡を表しています。発掘調査によって、ウバイド期からジェムデト・ナスル期、初期王朝時代、そしてヘレニズム時代に至るまでの各時代の遺構が発見されています。特にエアンナ地区では、ウルク期を通じて何度も神殿が建て替えられており、最古の粘土板文書も発見されています。

エアンナ地区とアヌ地区

エアンナ地区とアヌ地区は、ウルクの主要な神殿地区です。エアンナ地区では、イナンナ神殿を中心に複数の建造物が確認されており、特にウルク後期には巨大な神殿複合体が形成されていました。アヌ地区では、天空神アヌに捧げられた「白色神殿」が有名です。この神殿は、ジッグラトと呼ばれる高層建造物の先駆とされており、複数の層から成る巨大な基壇の上に建てられていました。

ウルクの王朝

『シュメール王名表』には、ウルクに5つの王朝が存在したと記されています。これらの王朝の中には、神話上の王や歴史上の王が含まれており、ギルガメシュ王もウルク第1王朝の王として名を連ねています。

ウルクの建築

ウルクの建築様式は、メソポタミアにおける後世の建築に大きな影響を与えました。神殿などの公共建築物は、レンガを用いた大規模なもので、幾何学的なデザインや彩色された装飾が施されていました。

ウルクの発掘調査

ウルク遺跡の発掘調査は、19世紀後半から現在まで、様々な国の研究者によって行われています。特に、ドイツの考古学者による長期間にわたる発掘調査が、ウルクの理解に大きく貢献しました。近年では、磁気探査や衛星画像を用いた調査も行われ、新たな発見が期待されています。

ウルクの遺物

ウルクからは、様々な遺物が発掘されています。中でも有名なのは、「ウルクの貴婦人」と呼ばれる大理石製の頭像です。これは、最古の人面表現の一つとして知られ、イナンナ女神を表していると考えられています。

まとめ

ウルクは、メソポタミア文明の中心地として、文字の発明、都市化、国家形成などに重要な役割を果たした都市です。その長い歴史と高度な文明は、現在でも世界中の人々を魅了し続けています。今後の発掘調査によって、ウルクの歴史や文化についてさらに多くのことが解明されることが期待されます。

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