エラム

エラム文明：古代オリエントの強国とその遺産

エラムは、古代オリエントにおいて紀元前3200年から紀元前539年にかけて栄えた国家、あるいは地域を指します。メソポタミア東部、現在のイラン南西部に位置し、ザグロス山脈沿いの肥沃な土地を領土としていました。エラムの人々は自らをハルタミと呼び、その土地をハルタムティと称していました。シュメール語のエラムはこの呼称の転訛です。

エラム文明の特徴

エラム文明は、地理的条件からメソポタミア文明と深い繋がりを持ちながらも、イラン高原地帯との関係も密接でした。メソポタミアとの交通は砂漠や湿地帯によって困難だった一方、イラン高原とは山岳地帯を通じた交流が盛んに行われていたと考えられています。

エラム人は独自の言語であるエラム語を使用していました。その言語系統は未だ解明されていませんが、ウルク古拙文字の発明とほぼ同時期に、原エラム文字と呼ばれる独自の文字体系を発明したことは注目に値します。原エラム文字の文書は現在のアフガニスタン近郊からも発見されており、エラム文化がイラン高原全域に大きな影響を与えていたことを示唆しています。また、ほぼ同時期にエラム語楔形文字も使用されていましたが、両者の関係性は不明な点が多いです。

エラム文明は独自の相続制度も特徴の一つでした。王位は親子ではなく、兄弟によって継承されるのが一般的で、この制度は長い間維持されました。

エラムの歴史：各時代の興亡

エラムの歴史は、言語（文字）史料の分類に基づいて、以下の時代区分がなされます。

1. 原エラム時代（紀元前3200年頃～紀元前2700年頃）

この時代には既にスサなどの都市が形成されており、原エラム文字による文字記録も存在します。しかし、原エラム文字の解読が進んでいないため、研究は考古学的情報に大きく依存しています。

2. 古エラム時代（紀元前2700年頃～紀元前1600年頃）

アワン王朝やシュマシュキ王朝など複数の王朝が興亡を繰り返しました。アッカド帝国やウル第3王朝の支配下に置かれた時期もありましたが、ウル第3王朝を滅ぼすほどの勢力を持つ時期もありました。この時代には文字記録が増え始めますが、後半は衰退期に入ります。

3. 中エラム時代（紀元前1600年頃～紀元前1100年頃）

イゲ・ハルキ朝、キディヌ朝、シュトルク朝など強大な王朝が台頭し、バビロニアを支配下に置くなど、エラムはオリエントにおける列強として君臨しました。しかし、ネブカドネザル1世の侵攻によって大きな打撃を受け、再び衰退します。

4. 新エラム時代（紀元前1100年頃～紀元前539年）

フンバンタラ朝が成立し、アッシリアとバビロニアの争いに介入を繰り返しました。アッシリアとたびたび激突し、最終的にはアッシュールバニパルによってスサが破壊されるなど、大国としてのエラムの歴史は終焉を迎えます。その後、アケメネス朝ペルシアの支配下に組み込まれ、独立国家としてのエラムは消滅しました。

エラムの文化と影響

エラム文明は、メソポタミア文明の影響を受けつつも、独自の文化を育みました。彼らの芸術、建築、宗教は、後のメディアやペルシア文明に大きな影響を与えたと考えられています。特に、独特の兄弟相続による王位継承制度は、後の王朝にも受け継がれた重要な要素の一つです。

エラム語と歴代王

エラム語の言語系統は不明です。紀元前3000年頃からアケメネス朝時代まで使用され続けました。本稿ではすべての王を網羅していませんが、主要な王朝の王を列挙しています。

(中略：歴代王の一覧は紙面の都合上省略)

結論

エラム文明は、古代オリエントにおける重要な文明の一つであり、メソポタミア文明との複雑な関係性、独自の文化、そして興亡の歴史は、古代オリエント史研究において重要な位置を占めています。その影響は、後のイラン高原における文明発展にも色濃く反映されていると言えるでしょう。

もう一度検索