ウルリヒ (ヴュルテンベルク公)

ウルリヒ・フォン・ヴュルテンベルク：波乱の生涯を送った公爵

ウルリヒ・フォン・ヴュルテンベルク（1487年2月8日 - 1550年11月6日）は、1498年から1550年までヴュルテンベルク公を務めました。彼の生涯は、権力闘争、宗教改革、そして領民との関係に翻弄された、激動の時代を象徴しています。

生い立ちと初期の統治

ウルリヒは、ヴュルテンベルク＝シュトゥットガルト伯ハインリヒとエリーザベトの間に生まれました。幼くして公爵位を継承し、当初は神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の後ろ盾を得ていました。彼は皇帝に付き従い、ランツフート継承戦争やローマ遠征に参加しました。しかし、ヴュルテンベルク国内では、その贅沢な暮らしぶりと重税によって領民の不満が高まりました。

1514年には、貧民コンラートの乱と呼ばれる農民一揆が発生。ウルリヒは、領邦等族に譲歩することで鎮圧を図りました。しかし、シュヴァーベン同盟との関係も悪化し、抗争に巻き込まれていきます。

結婚と追放

1511年、ウルリヒはバイエルン公アルブレヒト4世の娘ザビーナと結婚しましたが、夫婦関係は破綻。愛人関係やハンス・フォン・フッテン殺害事件などが重なり、領民の不満は頂点に達しました。ザビーナは実家の助けを借りてウルリヒから逃れ、ウルリヒ自身も帝国追放令を受けました。

1519年、シュヴァーベン同盟はウルリヒをヴュルテンベルクから追放し、公国は神聖ローマ皇帝カール5世に売却されました。ウルリヒは亡命生活を送り、スイス、フランス、ドイツ各地を放浪。フランス王フランソワ1世に仕えながら、ヴュルテンベルク奪還の機会をうかがっていました。

宗教改革と復帰

亡命中にウルリヒは福音派（ルター派）に改宗。ドイツ農民戦争が勃発すると、下層階級の味方を装ってヴュルテンベルクに侵攻しましたが、失敗に終わりました。しかし、ヘッセン伯フィリップ1世との親交が、ウルリヒの復権を後押しすることになります。

フィリップは、フランス王フランソワ1世やフルドリッヒ・ツヴィングリの支援を得て、ウルリヒの復権を画策。1534年、フィリップと共にヴュルテンベルクに侵攻し、ハプスブルク軍を破りました。ウルリヒはヴュルテンベルク公に返り咲き、カーデン条約によってその地位を認められました。

宗教改革の推進と晩年

復位後、ウルリヒは領内で宗教改革を推進し、多くの修道院を破壊し、教会財産を没収しました。しかし、再び重税を課したため、領民からの支持を失いました。シュマルカルデン同盟に加盟しましたが、カール5世との対立を避けようとしました。

シュマルカルデン戦争中、ウルリヒの軍隊は皇帝軍と戦いましたが、ヴュルテンベルクは占領されました。ハイルブロンの講和条約によって、ウルリヒは公爵の地位を維持しましたが、多額の賠償金を支払うことになりました。1550年、ウルリヒはテュービンゲンで死去し、息子のクリストフが後を継ぎました。

ウルリヒの生涯は、16世紀ヨーロッパの政治的、宗教的な変動を反映しています。権力闘争、宗教改革、そして領民との関係に翻弄されながらも、ヴュルテンベルク公として生き抜いた彼の姿は、歴史に深く刻まれています。

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