ウロキナーゼ

ウロキナーゼとは

ウロキナーゼ（Urokinase）は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子（uPA）とも呼ばれるセリンプロテアーゼの一種（EC 3.4.21.73）です。この酵素は、最初にヒトの尿から発見され、血栓溶解剤として利用されてきました。現在では、血液や細胞外マトリックスにも存在することが確認されています。

ウロキナーゼの働き

ウロキナーゼの主な役割は、プラスミノーゲンという不活性な酵素前駆体を活性化して、プラスミンという酵素を生成することです。プラスミンは、血栓を溶解したり、細胞外マトリックスを分解したりする働きを持つため、血栓症や細胞の移動に関わる生理的なプロセスにおいて重要な役割を果たします。また、血管の病気やがんの進行にも関与していることが示唆されています。

ウロキナーゼ自身も、不活性な前駆体である1本鎖ウロキナーゼ（プロウロキナーゼ）として合成されます。このプロウロキナーゼは、プラスミンなどの酵素によって特定の部位が切断されることで、活性型の2本鎖ウロキナーゼへと変換されます。尿から得られるウロキナーゼは活性型の2本鎖ウロキナーゼですが、血栓への親和性は低いことが知られています。一方、1本鎖ウロキナーゼは血栓への親和性が高く、血栓の表面で活性化されてプラスミノーゲンを活性化する働きがあります。

効能・効果

ウロキナーゼは、主に以下の疾患に対して治療効果が認められています。

急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解（発症後6時間以内）
脳血栓症（発症後5日以内で、コンピューター断層撮影において出血が認められないもの）
末梢動・静脈閉塞症（発症後10日以内）

これらの疾患に対しては、ウロキナーゼの血栓溶解作用が利用され、血流を回復させることで症状の改善を目指します。

禁忌

ウロキナーゼは、以下のような患者には投与することができません。

出血している患者（消化管出血、尿路出血、後腹膜出血、頭蓋内出血、喀血など）
2ヵ月以内に頭蓋内あるいは脊髄の手術または障害を受けた患者
頭蓋内腫瘍、動静脈奇形、動脈瘤のある患者
出血性素因のある患者
重篤な高血圧症患者
デフィブロチドナトリウムを投与中の患者

また、静注用6万単位製剤については、以下の患者には原則として投与を避ける必要があります（特に必要な場合には慎重に投与）。

心房細動のある患者（特に僧帽弁狭窄症患者）
感染性心内膜炎の患者
陳旧性心筋梗塞の患者
人工弁使用患者

副作用

ウロキナーゼの投与によって、以下のような重大な副作用が報告されています。

重篤な出血、出血性ショック
出血性脳梗塞、脳出血、消化管出血など
心破裂
ショック
重篤な不整脈（心室細動、心室頻拍など）

これらの副作用は、ウロキナーゼの血栓溶解作用によって出血のリスクが高まることや、心臓への影響によって引き起こされる可能性があります。投与にあたっては、患者の状態を十分に観察し、副作用の早期発見と適切な処置が重要です。

注意事項

ウロキナーゼは、血栓溶解作用を持つ強力な薬剤であるため、投与にあたっては医師の厳重な管理下で行われる必要があります。患者の状態や既往歴を考慮し、慎重な投与判断が求められます。

参考資料

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