ウーカレゴーン

ウーカレゴーン

ウーカレゴーン（古希: Οὐκαλέγων）は、古代ギリシア神話におけるトロイア王国の重要な人物の一人であり、都市の長老を務めていました。その名前は、長母音を省略してウカレゴンと表記されることもあります。

彼の存在は、古代の主要な文学作品において確認できます。ホメロスによる有名な叙事詩『イーリアス』の中では、トロイアの評議に参加する他の著名な長老たちと共に、彼の名が言及されています。これは、彼がトロイア社会において発言力を持つ地位にあったことを示唆しています。また、プリュギアのダレースが著した『トロイア戦争物語』においても、彼はトロイアの老王プリアモスの親しい友人として登場します。

ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』では、ウーカレゴーンの住居に関する描写があります。彼の邸宅は、トロイアの英雄デーイポボスの屋敷に隣接しており、アイネイアースがトロイアの炎上と陥落を目撃した際に、これら二つの館が共に燃え上がる様子が記されています。この記述から、ウーカレゴーンが城内の要所に邸宅を構えていたことがうかがえます。

ウーカレゴーンの役割について、特に具体的に描かれているのは、プリュギアのダレースによる物語です。ダレース版の記述によると、トロイア戦争は末期において、トロイア軍にとって極めて不利な状況となっていました。救援に来た強力な味方であるメムノーンやペンテシレイアといった英雄たちは討たれ、難攻不落とされていた城壁もギリシア軍によって厳重に包囲され、都市の陥落が現実味を帯びていました。

このような絶望的な戦況の中で、トロイアの内部では今後の対策を巡る激しい議論が交わされました。老王プリアモスは、アムピマコスという人物に支持され、徹底的な抗戦を主張して譲りませんでした。さらに彼は、もはや和平を唱える者たちは裏切り者とみなし、処罰すべきだと考えるほどに硬化していました。

しかし、同じ日、ウーカレゴーンは、アンテーノール、ポリュダマース、ドローンといった他の有力な重臣たちと秘密裏に集まりました。彼らは、もはやトロイアが持ちこたえることは不可能であると判断し、このまま都市が滅亡すれば、家族を含めた自分たちの命が危険に晒されると考えました。彼らは、家族の安全を守ることを最優先し、苦渋の決断として祖国トロイアを裏切る計画を立てたのです。

彼らは、プリアモスの怒りを恐れ、また事態が切迫していることを理解し、迅速な行動が必要だと判断しました。計画を実行するため、彼らは仲間であるポリュダマースをギリシア軍の陣営へと密かに送り込みました。ポリュダマースはそこでギリシアの指揮官たちと接触し、イーリオス城内にギリシア軍を安全に導き入れるための手引きを行いました。このウーカレゴーンたちが主導した裏切り行為が、結果として長年にわたったトロイア戦争を終わらせる決定的なきっかけとなったのです。

このように、ウーカレゴーンは文献によって描かれ方が異なりますが、特にダレースの物語においては、トロイア戦争の終結という歴史的な局面に、家族を守るための苦渋の選択として祖国を裏切り、重要な役割を果たした人物として記されています。

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