エアンナトゥム

エアンナトゥム：世界最古の戦争記録を残したラガシュの王

エアンナトゥム（シュメール語: 𒂍𒀭𒈾𒁺）は、古代メソポタミア、初期王朝時代の都市国家ラガシュの王です。彼は、現在知られている限り、世界最古の戦争記録を残した王として歴史に名を刻んでいます。

来歴

エアンナトゥムは、シュメール初期王朝時代のラガシュ第1王朝で王位につきました。彼の存在は、テルロー遺跡（ラガシュ王国の首都ギルス）で発見された戦勝記念碑「ハゲワシの碑（Stele of the Vultures）」を含む一連の記念碑によって知られています。これらの記録は、同時代の戦争を記述したものとして最も古いものです。

これらの記念碑文には、彼が戦って勝利したとする国の名が列挙されています。それによれば、エアンナトゥムはエラム、ウルア、ウンマ、ウル、ウルク、ウルアズなどの都市と戦い、勝利を収めたとされています。しかし、具体的な経過についてはほとんど分かっていません。

ラガシュ・ウンマ戦争

特にウンマとは、エアンナトゥムの治世より長期にわたる戦争を繰り広げることになります。ラガシュの史料によれば、かつてキシュ王メシリム（メスアンネパダ？）の仲介で国境が定められ、国境を示す境界石が置かれていました。しかし、ウンマ王ウシュが境界石を破壊して侵略してきたため、エアンナトゥムはこれを撃退したと伝えられています。

ラガシュ市とウンマ市の間には、「グ・エディン・ナ（シュメール語: GU.EDEN.NA。「平野の境界」の意）」と呼ばれる肥沃な平野が広がっており、この平野の帰属を巡る争いが戦争の背景にあったと考えられます。

ウシュ王の侵攻に端を発する戦いは長期に渡りましたが、エアンナトゥムはこれを撃退し、ウンマの次の王エナカリ（エンアカルレ）は国境線を元の場所に戻し、境界石を再び置くことに同意して和平を結んだとされています。

この戦争に関しては、敵対者であるウンマ側の記録が発見されておらず、ラガシュの記録がどの程度真実を伝えているのか検証は困難です。しかし、エアンナトゥムはキシュ王（この称号についてはキシュの項目を参照）を称するほどの勢力を誇った王であり、実際に数多くの戦争を戦って勝利を収めたと考えられます。

死後

エアンナトゥムの死後、兄弟であるエンアンナトゥム1世がラガシュの王位を継ぎ、ウンマのエナカリの次の王ウル・ルンマと抗争を続けました。後に、ラガシュの王エンメテナの治世でウンマの新王イルと和平協定を結びますが、これは史上最初の国際条約といわれています。

エアンナトゥムの治世は、ラガシュの勢力拡大と、メソポタミアにおける都市国家間の紛争の激化を示すものであり、古代史を研究する上で重要な意味を持っています。

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