エア・インディア101便墜落事故

エア・インディア101便墜落事故の概要

1966年1月24日、エア・インディア101便は、ボンベイ（現ムンバイ）発、ベイルート、アテネ経由でロンドンへ向かう途中、経由地のジュネーヴ・コアントラン国際空港への着陸を試みていました。ボーイング707-437型機（機体記号VT-DMN）は、着陸のため雲上から高度を下げ、管制官からの指示で一定高度を維持するはずでした。

しかし、実際には指示された高度を大幅に下回り、約19,000フィートまで降下。モンブランの山頂付近に激突し、乗員11名、乗客106名、合わせて117名全員が死亡するという痛ましい事故となりました。墜落地点は標高4,810mのモンブラン山頂付近であり、厳冬期であったため、遺体の収容作業は困難を極めました。

事故原因

事故調査の結果、事故機に搭載されていた2基のVOR（超短波全方向式無線標識）のうち1基が故障していたことが判明しました。機長は自機の位置を正確に把握しようと管制官に「我々はモンブランの横を通過したと思う」と報告。これに対し、ジュネーブの管制官はモンブランが5マイル前方にあるという意味で「貴機はモンブランまで5マイルある」と応答しました。

しかし、この曖昧なコミュニケーションにより、機長は「モンブランの横から5マイル離れている」と誤解し、そのまま降下を続けた結果、山頂に激突したものと推測されています。パイロットと管制官間の意思疎通の不備が、この悲劇を招いたと考えられています。

主な犠牲者

この事故では、インドの著名な物理学者であり、原子力開発にも貢献したホーミ・J・バーバー博士が犠牲となりました。彼の死はインド国内に大きな衝撃を与え、その後の原子力開発にも影響を与えたと言われています。

事故後の発見

事故から年月が経過した後も、事故現場では様々な発見がありました。

2012年8月21日、墜落現場近くでインドの外交行嚢が発見され、在パリインド大使館に届けられました。
2013年9月26日、登山者がルビー、サファイア、エメラルドなどの宝石が入った袋を発見。これは、エア・インディア101便または、同じくモンブランに墜落した1950年のエア・インディア245便の乗客の所持品と推測されています。
2017年7月、山腹で遺体の一部（手と脚の上部）とボーイング707型機のエンジン1基が発見されました。これらの発見から、長年不明だった犠牲者の身元特定につながることが期待されています。

まとめ

エア・インディア101便墜落事故は、コミュニケーションの齟齬と機器の故障が複合的に重なったことで発生した痛ましい航空事故です。この事故は、パイロットと管制官間の正確な情報伝達の重要性、航空機の安全管理体制の確立、そして、航空事故発生後の遺体収容や遺品発見の困難さを改めて私たちに示唆しています。犠牲者のご冥福を心よりお祈りいたします。

脚注

デイビッド・ゲロー著『航空事故』　イカロス出版、65頁
柳田邦男著『航空事故』　中公新書

関連項目

航空事故

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