エア・ベトナム

エア・ベトナム：ベトナム戦争下の空を彩った航空会社

1951年、南ベトナムは新たな航空会社を設立しました。それがエア・ベトナムです。バオ・ダイ帝によって設立された同社は、当初は国内線の運航を目的とし、セスナ170といった小型機を使用していました。しかし、ベトナム戦争が激化するにつれて、旅客需要は急増。エア・ベトナムは、ビッカース バイカウンやダグラス DC-3、DC-4といった機材を導入し、運航規模を拡大していきます。

戦争激化による需要の高まりを受け、エア・ベトナムはさらに大きな機材の導入を決定。エールフランスやパンアメリカン航空からボーイング727を導入し、国際線への進出も視野に入れました。また、エールフランスから中古のシュド・カラベルを導入するなど、積極的な機材調達を行い、多様な機材を保有するようになりました。中には、中華航空からリースされたカーチス C-46など、イレギュラーな機材も存在し、その機体の塗装は、航空会社ごとに異なる塗装が混在するなど、独特の模様になっていたようです。エア・ベトナムのシンボルマークは、黄金のドラゴンでした。

エア・ベトナムは、日本航空とのコードシェア協定を締結するなど、国際的な連携も強化。1970年代には、東京の羽田空港と大阪の伊丹空港に定期便を就航させました。大阪からは東京への経由便も運航していました。その他、東南アジア諸国の都市にも定期便を運航するなど、その路線網は着実に拡大していきました。

1973年のパリ協定後、エア・ベトナムは新たな塗装に一新し、さらなる事業拡大を目指しました。しかし、北ベトナム軍の南進により、国内線の縮小を余儀なくされます。1975年、ダナン国際空港からの脱出飛行や、サイゴン陥落直前のサイゴン国際空港からの市民脱出支援飛行を経て、エア・ベトナムは消滅しました。

エア・ベトナムは、ベトナム戦争という激動の時代を背景に、独自の道を歩んだ航空会社でした。多様な機材、国際的な連携、そして、戦争の中で人々の移動を支えたその歴史は、多くの物語を秘めていると言えるでしょう。現在、ベトナム航空が使用しているIATA航空会社コード「VN」は、かつてエア・ベトナムが使用していたものです。このコードは、エア・ベトナムの歴史が受け継がれている証と言えるのではないでしょうか。

運航機材

エア・ベトナムは、その歴史の中で様々な機材を運航していました。主な機材としては、以下のものがあげられます。

カーチス C-46
ダグラス DC-3
ダグラス DC-4
ボーイング 727
ボーイング 707
ヴィッカース バイカウント
シュド・カラベル

関連項目

エア・ベトナム706便ハイジャック事件

これらの機材は、エア・ベトナムがその時代を駆け抜けた証であり、戦争下での航空運航の困難さと工夫を物語っています。

外部リンク

エア・ベトナムの航空機の写真
在りし日のエア＝ベトナム
* 大阪国際空港(伊丹空港)のエア・ベトナム - ウェイバックマシン（2009年8月5日アーカイブ分）

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