エイティトウショウ

エイティトウショウ：中距離の女王、そして名繁殖牝馬

エイティトウショウは、1981年クラシック世代の活躍馬として競馬史に名を刻んだ日本の競走馬、そして繁殖牝馬です。2000メートル前後の距離でその真価を発揮し、『中距離の女王』と称賛されました。さらに、重馬場や不良馬場を得意としたことから『道悪の鬼』という異名も持ち、数々の重賞競走を制覇しました。

困難な幼少期と競走馬への道

エイティトウショウの母は1975年のオークスで2着に入ったソシアルトウショウ。その血統には、重賞3勝のトウショウピットや名馬トウショウボーイといった錚々たるメンバーが名を連ねています。父は藤正牧場が導入した新進気鋭の種牡馬、ダンディルートでした。
しかし、誕生直後、右前脚蹄骨を骨折するなど、競走馬として活躍できるか不透明なスタートでした。腱にも異常があり、胃腸も弱く、下痢を繰り返すなど、健康面での不安を抱えていました。そのため、当初は競走馬になるのは難しいと判断されました。しかし、牧場スタッフの献身的なケアにより、徐々に体質は改善されていきます。
3歳になった1980年4月、美浦トレーニングセンターの奥平真治厩舎に入厩しますが、環境の変化に適応できず、極度の食欲不振と栄養失調に陥り、一旦牧場に送り返される事態となりました。10月末に再入厩し、翌年2月、ようやくデビューを迎えます。

華麗なる競走馬時代

1981年2月、東京競馬場での新馬戦でデビュー。初戦は僅差の2着に終わりますが、2戦目で初勝利を挙げます。3戦目には当時オープン特別だったフラワーカップを制し、クラシック戦線でもその素質の高さを示しました。夏のラジオたんぱ賞では、最終コーナーから先頭に立ち、そのまま押し切り、重賞初制覇を飾ります。2着には後の菊花賞馬ミナガワマンナが入線するなど、高いレベルでの勝利となりました。
秋シーズンは、エリザベス女王杯を目標に調整されましたが、胃腸の弱さが影響し、本番前に3度の腹痛に見舞われます。それでもレースでは中団から鋭く追い込み、僅差の4着に入線しました。
古馬となった4歳シーズンからは、牡馬との対戦が中心となりますが、ここでエイティトウショウの真の実力が開花します。年頭の金杯（東）を3馬身差で圧勝し、重賞2勝目を挙げると、続く東京新聞杯では当時『無冠の帝王』と呼ばれた強豪モンテプリンスと接戦を繰り広げ、ハナ差の2着に敗れました。しかし、続く中山記念では再びモンテプリンスと対戦し、今度はハナ差で勝利を収めます。
その後、天皇賞（春）への出走を予定していましたが、左前脚繋靱帯炎を発症し回避。年内は休養に充てました。この年の最優秀5歳以上牝馬には中山記念で敗れたスイートネイブが選出されましたが、エイティトウショウは中央競馬フリーハンデで牝馬最高値となる59kgの評価を得るなど、その実力は高く評価されていました。
翌年も衰えを見せず、復帰後も好成績を収め、再び中山記念で4馬身差の圧勝劇で連覇を達成しました。7歳シーズンには、中山記念を最後に引退することが決定。最後のレースとなった中山記念では、三連覇を目指しましたが、僅かに届かず2着となりました。通算21戦で5着以下に終わったのは、6歳時の有馬記念のみという堅実な成績を残し、華々しい競走馬生活に幕を閉じました。

名繁殖牝馬としての活躍

繁殖牝馬となったエイティトウショウは、8頭の競走馬を産みました。その中には、クイーンカップなど重賞3勝を挙げたマザートウショウをはじめ、トウショウスペリア、トウショウヒューイ、トウショウルーイなど、オープン馬を複数輩出しました。競走馬時代と同様に堅実な成績で牧場を支え、名繁殖牝馬としてその名を刻みました。1998年、21歳でその生涯を終えました。

エイティトウショウは、類まれな能力と強靭な精神力、そして、決して諦めない闘志を併せ持った、まさに『中距離の女王』、『道悪の鬼』と呼ぶにふさわしい名馬でした。その血統は現在も多くの競走馬に受け継がれ、競馬界に大きな足跡を残しています。

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