エイベル・ガウワー

エイベル・アンソニー・ジェームズ・ガウワー

エイベル・アンソニー・ジェームズ・ガウワー（Abel Anthony James Gower、1836年7月30日 - 1899年1月15日）は、19世紀のイギリスの外交官であり、幕末から明治初期の日本において重要な役割を果たしました。彼は箱館、長崎、兵庫・大阪で領事を務め、激動の時代における日本とイギリスの関係を支えました。また、彼はアマチュア写真家としても知られています。

生涯と業績

ガウワーは1836年、イタリアのリヴォルノで生まれました。外交官としてのキャリアは中国で始まり、1859年にはラザフォード・オールコックと共に来日し、江戸の東禅寺にあった英国公使館に勤務しました。1861年には、オールコック一行と共に長崎から江戸まで陸路を旅し、その直後に第一次東禅寺事件に遭遇しましたが、幸いにも難を逃れています。1863年には長州五傑の出国を支援し、薩英戦争にも参加するなど、幕末の動乱期において様々な出来事に関わりました。

1864年には長崎領事代理に就任し、その後、箱館領事として、アイヌ人骨盗掘事件の解決に尽力しました。この事件は、英国領事館員が人類学研究のためにアイヌの墓地を盗掘したもので、アイヌの人々の怒りを買い、箱館奉行所に訴えられる事態となりました。ガウワーは、ハリー・パークス公使の命を受け、事態の収拾に当たりました。彼は盗掘に関与した領事館員を処罰し、アイヌに対して謝罪の意を表明するとともに、慰謝料を支払い、祭事を執り行うことで、事件の解決に尽力しました。この事件への対応は、彼の誠実さと外交手腕を示すものとして評価されています。

箱館領事を務めた後、1867年からは長崎領事に、1873年からは兵庫・大阪領事に就任し、1876年に退官しました。彼の退官後の足跡については詳しい記録は残っていませんが、日本とイギリスの友好関係に貢献した功績は忘れてはならないでしょう。

写真家としての側面

ガウワーはアマチュア写真家としても知られており、初期の写真史研究において、その名が取り上げられることがあります。かつては、ネグレッティ&ザンブラ社の特派員として、1850年代後半に中国や日本で写真撮影を行った人物の一人ではないかと考えられていました。しかし、その後の研究により、実際に撮影を行ったのはピエール・ロシエであったことが判明しています。ライデン大学の写真コレクションには、ロシエが撮影したガウワーの肖像写真が所蔵されており、二人が1859年に長崎から江戸まで同船したという記録も残っています。

家族

箱館赴任の際には、兄で鉱山技師のエラスムス・ガウワーを伴いました。エラスムスは幕府に雇用され、茅沼炭鉱の再開発に携わっています。

エイベル・アンソニー・ジェームズ・ガウワーは、激動の時代に日本とイギリスの架け橋となり、様々な分野で足跡を残した人物です。彼の功績は、今日の両国関係の礎となっています。

もう一度検索