エイベル・P・アップシャー (駆逐艦)

エイベル・P・アップシャー（USS Abel P. Upshur, DD-193）

エイベル・P・アップシャーは、アメリカ海軍の駆逐艦として1918年に起工され、1920年に就役したクレムソン級の一艦である。この艦名は、アメリカ海軍の歴史に名を馳せたエイベル・アップシャー海軍長官にちなんでいる。艦歴は多岐にわたり、様々な任務をこなしつつ、海軍の重要な一翼を担ったことが評価されている。

艦歴の概要

エイベル・P・アップシャーは、1918年8月20日にバージニア州ニューポート・ニューズの造船所で起工され、1920年2月14日にジョージ・J・ベンソンの手によって命名、進水した。その後11月23日にフィラデルフィア海軍造船所で艦長ヴィンセント・H・ゴッドフリィの指揮のもとで就役を果たした。就役当初からこの艦は大西洋艦隊第3戦隊第37駆逐艦分艦隊に配属され、東海岸沿いの巡航や艦隊演習、訓練に参加する活躍を見せた。

しかし、艦はいったん1922年に予備役となり、1928年から1930年までの約2年間、ワシントン海軍工廠で海軍予備役兵の訓練艦としての任務を果たした。以後、エイベル・P・アップシャーは海軍から除籍され、国税局の指導の下で沿岸警備隊に転属し、密造酒摘発の任務に従事する道を歩むこととなった。

1934年に再び海軍に返還されてからは、フィラデルフィアで予備役として保管され、1939年には再就役し東海岸での中立パトロール任務に参加することになった。最終的に1940年にはカナダのハリファックスで解役され、イギリス海軍に移管された。これは、アメリカがイギリスに旧式駆逐艦を貸与する合意によるものであった。

イギリス海軍での任務

イギリス海軍に移管後、エイベル・P・アップシャーは「クレア（HMS Clare）」という艦名で呼ばれることになった。彼女は最初のタウン級小艦隊に配属され、1940年9月26日に北アイルランドのベルファストに到着した。ここでクレアは第7護衛グループに加わり、多くの対潜兵器を装備し、大西洋を横断する船団の護衛任務を担った。

1941年には、沈没したイギリスの汽船「リグマー」の乗組員を救助するなど、数多くの任務をこなし、1942年のトーチ作戦にも参加する。さらに、同年11月にはオランの北方でドイツのUボートを攻撃し、撃沈する戦果を挙げる。彼女はその後、大西洋横断の船団護衛任務を再開した。

1943年にはシチリア島侵攻作戦に参加し、その後は干ドックで修理を受け、航空機のための標的艦任務に従事するなど、アメリカ海軍からイギリス海軍への移管後も、数々の重要な活動を遂行した。最終的には1945年にスコットランドのグリーノックで予備役に移行し、長い航海の歴史に幕を下ろすこととなった。

エイベル・P・アップシャーは、その艦歴と任務の多様性から、アメリカ海軍の駆逐艦としてだけではなく、イギリス海軍においても貴重な存在として扱われ、多くの海軍作戦に寄与した艦船である。

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